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ナベリウス・カルエゴと出会い ※カルエゴ学生時代 ページ2

オペラ先輩との出会いから数日。

使いっ走りのような事をさせられ、日々に嫌気が差していた昼休み。シチロウは何か用があるらしく傍にはいなかった。
オペラ先輩もこの場──屋上には居らず、俺一人。

──静かだ。心地が良い。

そう、風に吹かれながら息を吐いた時だった。

「ナベリウス・カルエゴ君。……合ってる?」

頬に当たった唐突な冷たさに飛び退く。
女の悪魔が俺が飛び退く前の場所、その傍に居る。
女の声は耳に入るのが不快ではなかった。
俗に言う、美声。

「……あぁ」

警戒を解かずに、一言返す。
女はへらりと悪魔好きしそうな笑顔を俺に向ける。
そして、手に持った冷たさの原因──缶のブラックコーヒーを掲げる。

「購買で貰ったんだけどさ。私、ブラックコーヒー飲めないの」

女悪魔はそう、関連性の無い言葉を吐きつつ俺に歩み寄る。俺の手を掴み、無理やり缶コーヒーを握らせてきた。

「おい、何を勝手に持たせている」
「あ、嫌いだった?」
「そういった理由では無い」

すっかり女のペースに呑まれている。
俺の威圧をものともせず、へらへらと流した様な返事をする女。叔父の様で苦手なタイプだ。

「なら、助けると思ってさ。受け取っておいてよ。ついでに宣戦布告もしたかったし」

──宣戦布告。

女はそう言葉にした。喧嘩か?また勘違いだろう。
俺がそう思った時、女は変わらない笑顔を向けてきた。
そう、表情は一切変わらなかったのだ。

「言っとくけど、人違いじゃないよ。『学年首席』ナベリウス・カルエゴ君」

──威圧感、それ以外は。

笑顔と共に言葉を聞いた直後、呼吸が止まる。
いや違う、出来なかったのだ。
俺の視界が一瞬にして深海のそれへと変貌し、溺れかけた。

暗く重く、無限に続くかと錯覚させる景色。
俺を見下ろす巨体の鯨。
呼吸を躊躇うような重い水圧。

──『格の違う悪魔から威圧を受けた場合、圧倒された悪魔は幻覚を見る事がある』──

それをこの身で、眼中にも無かった悪魔に魅せられたのだ。対処が遅れた。
しかし、息を忘れ、瞬きをした、その瞬間。
その光景は消え去り、いつもの屋上が眼前に広がる。

「私、フォカロル・A。同じクラスだったよね。終末テスト、楽しみにしてて。──私が勝ったら、仲良くしてよ。あ、エギーって呼ばせて貰おうかな」

女はそう告げると、軽く手を振り出ていった。
最後まで、笑顔を崩さずに。
これが、女──フォカロル・Aとの出会いだった。

ナベリウス・カルエゴと終末テスト ※カルエゴ学生時代→←設定



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作者名:とある誰かの作品倉庫 | 作成日時:2023年10月13日 0時

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