後日談 ページ44
モストロ・ラウンジ、閉店後のキッチンに、油と醤油の香ばしい匂いが充満していく。
完成品を一つ味見して、頬に手を当て感激した。
「うん、美味しい!」
「お上手ですよ、Aさん」
手伝って頂いたジェイド先輩のお墨付きも貰い、準備万端。
ちなみに、今日の分の報酬はこの唐揚げの材料費で消え去った。
ジェイド先輩へのお礼は、『では、後日……レンタル彼女として、一緒に山に行ってください』との事で話が落ち着いた。
出来上がったものを皿にこんもりと盛り付け、アズール先輩の元に案内してもらう。
「……うわぁ……」
「メダカちゃん、おかえり〜♡待ってたよぉ?」
甘ったるい声で擦り寄るフロイド先輩を、取り敢えずで受け止める。
瞬時になだめて、離れてもらった。
周りを見渡す。
そして、現場の荒れ具合に気が遠くなった。
中心に蛸壺。
しかもなんかタコ足がはみ出てる。
くぐもって聞こえる駄々。
タコ足に荒らされたのか、散乱している本の数々。
──……帰りたいけど、帰ったらヤバいよね。
覚悟を決めて、蛸壺をノックする。
「寮長〜……仕事終わったんで、顔出しに来たんですけど……」
ピタリ。
沈黙が流れる。
タコ足は蛸壺の中に収まっていく。
その後、ひょこっと顔だけ出したアズール先輩。
灰色の肌で分かりにくいが、目元も腫れてるし、よく見れば目自体も充血していた。
「……Aさん、今まで雇用主である僕に顔を見せなかったのに、よくもまあ!面の皮が大変っ、厚く……て……」
嫌味を捲し立てるアズール先輩。
それでも私の手元を見てからは、勢いのある言葉尻が段々と萎んでいく。
何せ、私は山盛りに盛り付けた唐揚げの乗った皿を持ってきたのだから。
奇妙な沈黙が流れる。
「……その……お許し頂くために、作ってきたんですけど……材料費は、今回の報酬で……」
「…………許しを乞う者としては、賢明な判断ですね」
『ですが、生憎今日の摂取カロリー分はオーバーしてしまいますねぇ!』と怒鳴り気味で怒られる。
あんまりにもわかりやすい八つ当たりに、眉を下げて笑うしかない。
対抗策は考えてあるのだけれど。
「食後の運動も兼ねて、模擬戦もお相手して頂けますか?」
ジェイド先輩からの入れ知恵だ。
どうやら、先日の雑魚共で発散してたのを大層気にしているようだったらしいので。
私の提案に、アズール先輩はやっと口角を上げた。
「そこまで言うなら、許して差し上げますよ」
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とある誰かの作品倉庫(プロフ) - みーさん» わぁ、ありがとうございます!誤用しがちだったので助かります!ありがとうございます! (2021年6月3日 20時) (レス) id: ba04661380 (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - すみまへんめちゃくちゃ誤字してました!謙遜する場合は「力不足」となります!本当すみません(泣) (2021年6月3日 15時) (レス) id: 9c701de065 (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 初コメ失礼します!ページ25で夢主ちゃんが言っていた「役不足」は「役目が実力不相応に軽いこと」「与えられた役目に不満を持つ」となりますので、謙遜するのでしたら「役不足」が適任かと思います!楽しく読ませてもらっているのに初コメがこんな内容ですみません! (2021年6月3日 15時) (レス) id: 9c701de065 (このIDを非表示/違反報告)
とある誰かの作品倉庫(プロフ) - 43さん» 正解です!主人公の家柄はクトゥルフ神話系統の封印をしている設定になってます!気付いて下さり、またコメント頂きありがとうございます! (2021年6月2日 11時) (レス) id: ba04661380 (このIDを非表示/違反報告)
43 - お話の構造とか滅茶苦茶好きです…!もしかしてクトゥルフ要素入ってますか…? (2021年6月2日 10時) (レス) id: 1d67640196 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とある誰かの作品倉庫 | 作成日時:2021年5月27日 4時