風柱邸のお手伝いさん。

EPISODE #7 ページ8

【不死川side】


失礼します。と声がして入ってきたのは20代くらいの
若い女だった。


どうやらお茶を持ってきたようだ。



その女は自分と店主の前にお茶を置くと、店主の耳の横に顔を持って行き、何やら話し始めた。



「昨夜様、夜咲がまた仕事先で…。」



「ﾁｯ。またか。帰ってきたら部屋に通すように伝えておけ。」



「承知致しました。」



話が終わると女は部屋を出ていった。




不死川「何事だァ？｣




昨夜「いえ、なんでもございません。
少々、この店の者が仕事先で揉めてしまい…。

何度言っても聞かないんですよ…。」




そう言って昨夜と言われていた男は困ったような、イラついたような顔で笑う。




この際、問題を起こしてる奴でもなんでもいい。
どうせ、すぐに仕事を辞めるだろう…。




不死川「……そいつァ。いくらで雇える。」



昨夜「…はい？」



不死川「そいつはいくら払えば雇えるかって聞いてんだァ。」



昨夜「…は、はい。他の女中よりだいぶ安いです。」




不死川「…そいつに決めた。」



昨夜「し、しかし、仕事が出来ないのでしばらく休ませようかと…。」




…めんどくせェ。




不死川「はァ。…倍払う。それでいいだろォ。」




昨夜「ば、倍ですか！？」



不死川「あァ。」




別に倍になったからといって困ることはない。

柱の給料は他の一般隊士とは桁が違う。


むしろ使い道がなくて困っていたくらいだ。




不死川「明日また来る。」



昨夜「し、不死川さま…。」





＿＿＿＿＿と、いうのが昨日までの話。





俺は今、実際に夜咲と呼ばれる女中を前に話している。



『初めまして。夜咲Aと申します。』




不死川「…不死川だァ。」




仕事先で何度も問題を起こしていると聞いた割には
綺麗な顔立ちをしている。

礼儀も正しい。




昨夜「不死川様。今回の雇人ですが、本当にこちらの女でよろしいのでしょうか…。」



コイツは昨日といい今日といい、しつこすぎる。




不死川「しつけぇなァ。こいつでいいっつてんだろォ。

…明日だ。明日迎えに来る。支度しとけェ。｣




『かしこまりました。』




そう言って頭を下げる仕草まで美しく見えた。





そそくさと部屋を出た俺は


不死川「…お萩でも買って帰るかァ。」



と、足先を風柱邸とは逆の甘味処へと向けた。

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