風柱邸のお手伝いさん。

EPISODE #16 ページ17

【Aside】



不死川「落ち着いたかァ。」



『…はい、すみませんでした。』




あの後私は涙が枯れてしまうのではないかというくらい泣いた。

不死川さんはただ隣で私が泣き止むのを静かに待っていてくれた。
優しい。



不死川「んで、お前これからどーすんだァ。」




そうだ。そのことを何も考えてなかった。




『…どこか、女中として雇ってもらえるところがないか探してみます。』



不死川「そんなボロボロにやられた顔の女を雇ってくれるとこがあんのかァ？」




人の顔をそんなに言うなんて酷いな。と思ったが、
よくよく考えてみれば湯浴みした時に化粧はすべて落ちてしまっている。

そう、つまりはあの男、昨夜に殴られたときにできた傷が見えているということだ。




『あー…、化粧で隠せば何とか…。』





不死川「前の店主だろ。昨夜とかいうやつ。しかも顔だけじゃねェだろ、傷。」





え、あの時に見たんですか。と聞く前に
見てねェからなァ。と念を押されてしまった。




不死川「お前と初めて面会した時に歩き方とか見てたらわかるわァ。」




不死川さんには何でもお見通しだ。

まだ会って三日ほどしか経ってないのに。




不死川「……そん時、お前の金払った。」




お金？…あぁ、女中を雇うときに払うやつか。




『それが…どうしたんですか？』




不死川「…しかも倍だァ。」




『…え、倍ですか！？』




いきなり何を言い出したかと思うと、女中として私を雇うお金を倍払ったというではないか。




『な、なんで私なんかに倍の値段払ったんですか！』




確かに私は他の皆より安い値で雇われていた。
しかし、倍にもなるとかなりの値段がいくはずだ。




不死川「…うるっせェ。金なら余るほどあるわァ。」




…そういえば不死川さんはお金持ちだったっけ…。

昨夜からうるさいほど念を押されたのを思い出した。


しかし、不死川さんがお金を払ったから何なのだ。


もしかしてお金を返せだとか？
申し訳ないが、それは私にどうこうできる問題ではない。



『す、すみません、不死川さん。
私にはそのような大金、すぐには用意できません。
しばらく待って頂けますか？』




私がそう言って頭を下げると、はァ。という
小さなため息が上から降ってきた。




不死川「…別に金を返せとかは言わねェ。
そのかわり、」




『そのかわり？』




不死川「…この屋敷で女中としてしっかり働け。」

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