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『やだ。話さない。』
小松「なんでですかぁ!」
『私はもう思い出したくないの。話したって私は損しかしない。』
『あんたたちだって聞いても何も面白くないよ。』
小松「僕は面白い話だと思って聞いてないです。天女様が辛そうな顔をする理由が聞きたいだけです。」
「それに、僕たちに話して損したと思わせません!」
吉野「天女様、彼にだけでも聞かせてあげてください。小松田君は大丈夫だとあなたも感じているでしょう。私は出ていきますから。」スッ
くいっ
『いいよ。お前も聞いていけ。』
立ち上がった吉野の裾を引っ張り、そう言った。
それから私は前の世界でいじめられていた事実だけを簡潔に話したが小松田は不満そうにしてた。ちゃんと話してと言いたそうに。
仕方ない、【男子にされたこと】を除いて全て話すことにした。
全て話し終えると、小松田はとても悲しそうで、耳が垂れ下がった犬のようだった。吉野はまだあるだろとでも言いたそうな顔をしていた。ここまで話したんだ。いいだろ。許せ。
ガバッ
小松田がいきなり抱きついた。
『え、こ、小松田?離れろ。こんなに近いのは…』
ちらりと吉野を見る。吉野はやれやれといった様子でこちらに向かう。良かった離してくれる。
ぽん
あれ?吉野は小松田を引き剥がそうとしないどころか頭に手を乗せてきた。
『お、おい吉野。これはどういうことだ。』
吉野「まあいいじゃないですか。しばらくこうされてなさいよ。」
『は、いいのかよ。小松田は。』
吉野「いいです。というか、私はとっくに小松田君には大丈夫だと言いました。」
「あなたって意外と真面目ですよね。」
『それならそうと言えよ。全く。無駄に神経使わせやがって。あと、別に真面目じゃねぇよ。』
吉野「はいはい。にしてもあなた甘えるの下手ですね。なんですかその手は。」
小松田に腕ごと抱き締められ、でも彼には触るまいとした手が行き場を失っていた。
『どうしたらいいんだよ。』ムスッ
吉野「こうすればいいんです。」
吉野はそっと行き場の無くなった手を取り小松田の背中に乗せた。
小松田はそれに反応するように抱き締める力が強くなった。
少し恥ずかしい気もするがまあ悪くない、と思う。
それどころか暖かくて気分が良い。体制はきついはずなのにずっとこうしていたいような気もする。不思議。
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作者名:きゅー | 作成日時:2024年1月19日 12時