番外編3−�� ページ48
『貴方、見たところ祓い屋、というやつだものね？
祓い屋、ということは、お家に従って怪異を祓っているということだよね？
自分から家に雁字搦めにされるなんて信じられないな。
好きでそういうことになってるの？とっても不思議。』
「…君は、随分家に反発心があったようだね。怪異になるくらいだから仕方ないのかな。」
『うん、家も家族も嫌いだったよ。
え？もしかして貴方は好きなの？…そうなんだぁ。
愛されてるんだねぇ。』
Aのその一言には、悪意が込められていた。
「…話はそれで済んだかな？それじゃあ消えてもらおうか。」
ジャラ
怪異捕縛用の数珠がAに巻き付く。
Aは特に気にせず、話を続ける。
『貴方を見ていると、昔の自分を見ているようで嫌悪感があるのかなって思ってたんだけど…、違ったね。
貴方が本当に愛して、愛されてるから、私貴方が嫌いなんだ。』
ジャラ
「！？」
巻き付いた数珠が、劣化し落ちていく。
ざらざらと砕けて落ちていく。
「君、そんなに強い怪異には見えないけど…。」
『そうだね…、私、怪異の中ではとっても弱い方。
でも、人間相手ならとっても強い方。』
トンっとAは男の肩にタッチした。
刀を振られふわりと距離を取る。
「…！？何をした！」
ガクリと膝をついて苦しそうな表情をする男にAはニコニコと笑う。
『なーいしょ。』
「このっ！」
バチィッ
雷がAを襲う。
『残念でした。』
雷は当たらずにその場で止まっていた。
『貴方、怪異が嫌いみたいなことを言うけれど、怪異なんかよりも人間が一番怖くて汚いことを忘れない方がいいよ。
ああ、もしかして、気が付きたくないだけ？』
くすりくすり
Aは笑う、嘲るように。
『…飽きたな、帰る。
もう二度と、貴方に会いませんように。』
「！待て！」
タンッ
軽い足音をさせ、屋上からAは飛び降りる。
男が急いで下を見下ろせば、その姿はどこにもなかった。
「……」
―――もしかして、気が付きたくないだけ？
少女の言葉が、いつまでも男の…源輝の頭の中に残った。
これは、輝しか知らない、Aの一面のお話。
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作者名：カノン | 作成日時：2020年11月22日 3時
