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学校はもうすっかり元通り。
可愛い後輩ちゃん…お名前は蒼井茜くんというらしい。彼は私を一瞥した後、一度頭を下げて走って出て行ってしまった。
寧々ちゃんの後輩の少年、名前は源くん、その子は寧々ちゃんを抱えて出て行った。
おじい様はミライちゃんを連れて境界へ戻ったし、残るのは…。
「Aさん…、少し…話してもいいかな…？」
『…うん、もちろん。』
ニコッと微笑む。
普くんは少し視線を彷徨わせた後、こっち…と控えめに手を取った。
普くんなら、たぶん一緒にいてもつー君は怒らないんじゃないかな？
まぁ、怒ったら怒ったで、素敵なつー君が見られるはず。
連れてこられたのは旧校舎屋上。
私の終わりで、始まりの場所。
「Aさん…、俺、Aさんのこと、何も知らなかったのかな…。」
『え？』
「友達…だと、思ってたんだけど…、君が時計守をやってたなんて知らなかったし、怪異になったことだって…。」
『何も知らなかったなんてことない…、きみと過ごした私も、確かに私だった…。
全部ではないけど、私のこと…きちんと知ってくれてた。』
「…つかさ、は…君の全部を知ってた…？」
暗い表情で普くんはそう言う。
『…私が6年間の契約で、時計守をしていたことは伝えてたよ。
つー君、時間止められるのすごいって笑ってた。まぁ…つー君幽霊とか見えないし、信じられなかったかもしれないけど…。』
「…つかさはきっと、君の言葉は全部信じてたよ。…俺が、そうだから。」
『…そうだったら…嬉しいなぁ…。』
私は普くんの言葉にふふと笑った。
普くんは落ち込んでいるようだけど、つー君にだって伝えていないことはあった。
人としての生を手離そうと、自分の独断で決めて、独断で実行した。
つー君に、伝えないまま。
「…俺、あの時何があったのか…本当のことが知りたいんだ。
あの時、屋上で何があったの…？
俺が見たのは、つかさが屋上のフェンス内にいて、Aさんが
『両手を繋いでいたところ…？』
「…そう。
そしてその手は離れて、後ろへ倒れるように…Aさんが…俺の、目の前に…！」
そっと普くんの頭へ手を置く。
『随分驚いたよね、あんなことしちゃってごめんね。
本当はね、死ぬつもりなんてなかったんだよ。』
「え…。」
そう、最初は、本当に死ぬつもりなんてなかったんだ。
まだ。
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作者名：カノン | 作成日時：2020年11月22日 3時
