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「イタッ!何これ!痛いじゃない!」

掴んだものをそのままエリスちゃんは手放すとコンクリートの地面に落とした。

『…あ…。』

なんで…。

『まえだ…?』

私はエリスお姉ちゃんが落としたもの、
前田藤四郎の本体を拾い上げる。
両手でそれを持てば、わずかに温かみを感じた。

『まえだ…、わたしのまえだなんだね…。』

私の本丸の、私の神様。

本当に、来世まで、加護を届けに来てくれたの?

『…ありがとう…、わたしのかみさま…。』

私、ちゃんと生きるからね…。

「ああもう、火傷したわ。
A、それは大事なものなの?」
「大丈夫かいエリスちゃん!」
「別にヘーキよ。」

手をぷらぷらと振りながらエリスちゃんがこちらを見た。

『エリスおねえちゃん、て…だいじょうぶ?』
「全然ヘーキよ!あたしはあなたのお姉ちゃんなんだからね!で?それはなぁに?」
『わたしの、かみさま。』

私は笑って両手で前田を見せた。

「なんだ、ちゃんと笑えるんじゃない!悲しそうな顔ばかりするから心配だったのよ!
カミサマ、ということは大事な物なのね?」
「その短刀、どこから降ってきたのだろうねぇ。
神様、か…。

…Aちゃん、これだけは答えてほしいのだけど…。」

真剣な面持ちをしたおじ様に、私は息を飲んだ。

「君に帰る場所はあるのかね?」



私は答えることが出来ずに、下へとうつむいた。

帰る場所はない。

だって、私はなぜ路地裏にいたのかも、この世界のことも、何も知らない。

帰りたい場所は、あるのだけど。



「…もしよかったら、私たちと一緒に来るかい?」
『リンタロウおじさまたちと…?』
「そうだよ。君さえよかったら、だけど。
エリスちゃんが君のことを気に入っているし、何より私も、君のことが気に入ったよ。」
『……。』

私はチラリと前田を見た。
じんわりと温かみを帯びた。

…うん、わかった。

『よろしくおねがいいたします…。』

私は深々と頭を下げた。

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Hi! - はじめのエリスちゃんの言葉にやられました。好きです! (2019年7月14日 23時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
しの - マッジで面白いねんけど 更新待ってますね (2019年7月12日 0時) (レス) id: 5129f74190 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - わさまんさん» それに気が付くとは…。知られたからには…。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - silentさん» ありがとうございます。いいことがあって悪いことがあったら次はまたいいことが来ますよ。例えば賽子6・6とか。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - KISH○W推し(女)さん» ちゅやはいいぞ。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カノン | 作成日時:2019年6月6日 19時

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