70.度胸の話 ページ24
｢無理です無理です無理ですっ！！！｣
｢早くしないと咬み殺すよ｣
｢イッショ！イッショ！｣
カオス、まさに現場はカオスだった。小鳥さんの可愛い声が今だけは恨めしい。商店街を歩いていく人々の視線に潰されそうだ。無理という思いだけが募っていく。雲雀さんの我慢もそろそろ限界のようで、トンファーを取り出していた。
さっきまであんなに幸せだったのに、いや、幸せだったからこそのこれか。一時の夢だったんだ。幸せの後に不幸が来るのはお決まりだもの。
｢こんな所で歌うなんて、できません……｣
｢A！ヤル！｣
小鳥さんまで。小鳥さんは一緒に並中校歌を歌ってくれるらしいけど、一人と一羽でアカペラなんて普通に無理でしょう。できない。絶対無理。敢えて私服で来いと指定したのは、風紀委員だとバレないようにするためだったのか。あの服を着ているだけで、一部の人間は足を止めるだろうから。
これは、本当に、私の実力だけで足を止めてもらわなければならない。そろそろ本当に雲雀さんが怒りそうなので、息を吸い込んだ。
｢み、みーどーりたなーびく……｣
｢声が小さい｣
｢ひぅっ！｣
声が小さいって、こんな人通りの多いところで歌を歌うのに大声なんて出せるわけがない。私じゃなくたって、こんなの誰もやりたがらないだろうに。せめて歌が上手ければよかった。
｢こういう系をやるなら、フリーハグとかじゃダメだったんですか｣
何とか歌うのを回避したくてそう言っただけだ。ヒュッと風が切れる音がして、目を見開く。そこには、凍えるほど冷たい目をした雲雀さんがいた。首元のトンファーに思わず呼吸も忘れてしまう。
｢A｣
あ、また、名前
｢フリーハグなんて、やったら殺す｣
｢ひゃい……｣
震えたせいで返事すら上手くいかない。とりあえず、雲雀さんはフリーハグが嫌いだと覚えておこう。まさかこんなに怒るなんて。冷えた鉄の感触が首元から消えて、ようやく息を吐けた。
｢あんなのに参加してくる男なんてロクなのいないよ｣
｢それは偏見……｣
｢そんなにハグしたいなら僕がしてあげる｣
｢いや、ハグがしたいわけじゃあ｣
噛み合わない会話をしながら、小鳥さんが大きく口を開けているのをちらっと見た。まるで欠伸しているみたいだ。
｢とにかく、早く歌って｣
ああ、流れたと思ったのに。
小鳥さんが私の肩に降り立って、いよいよ後戻り出来なくなってしまった。地獄の1泊2日、開始早々に泣きたいんですけれど。
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無気力boy(プロフ) - 初コメ失礼します。いつも楽しみに見てる者です……！これからも楽しみにしています( ´▽｀) (2019年4月20日 19時) (
レス) id: 947057a2b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月18日 23時
