劣等少女の病名【2】 (ページ22)

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68.合宿当日の話ページ22

今日は朝早くから起きて準備に追われていた。なんたって合宿の日だからだ。1泊2日、学校に泊まりがけということしか分からないけど。とりあえず五時に目覚ましをかけて、今は朝食を作っていた。

おばあちゃんには随分前に説明したけど、もちろんメモも残している。一日だけとはいえおばあちゃんを一人にすることは心配だった。でも、おばあちゃんは楽しんで来なさいと笑う。人生一度きり、誰かに縛られてはいけないと。

だから、せめて美味しいご飯を食べて欲しい。私なんかのご飯でも美味しいと言ってくれるから、沢山作っていこう。

｢あら、A！準備はしなくていいのかい？｣

｢おはよう。大丈夫だよ、昨日の内に済ませてるから｣

｢あとは私がやっておくから、服、着替えてらっしゃいな｣

｢……うん、分かった。ありがとう｣

おばあちゃんにそう言われてしまうと、どうにも弱い。というより、最後には私が折れてしまうんだ。部屋に戻ってあの買った服に着替える。セーラー服ではなく、敢えて私服で来いと指定されているのは何か意味があるんだろうか。

いや、あの人が意味の無いことをするはずもない。ストライプのワンピース、外は暑いので最近はずっとポニーテールだ。毛量が多くて、本当に馬の尻尾みたい。青いけど。

｢あれ、私こんなの……｣

買ったっけ。という言葉は出てこなかった。ドタバタ階段を駆け下りて、キッチンに立っているであろう人の元へ飛び込む。手にはシルバーのネックレスを持って。

｢おばあちゃんっ！！｣

｢びっくりしたかい？｣

｢なに！どうしたのこれ！｣

｢近くのお店で買ってきたんだよ｣

｢嬉しいけど、一言言ってくれても｣

｢それじゃあサプライズにならないでしょうに｣

それはそうだけど、おばあちゃんの身に何かあったらどうするんだ。プレゼントは嬉しい。でも、私にとっての家族は、おばあちゃんだけだから。｢ほら、貸しなさい｣そう言われネックレスを手渡す。後ろを向いてと支持されてくるりと半回転した。首元の冷たいものに触れる。

｢うん、よく似合ってる。可愛いね｣

｢あ、ありがとう！おばあちゃん！｣

装飾品をつけるのは初めてだった。嬉しくて、珍しく自分から外に出たいと思った。パジャマとセーラー服を詰めた鞄を持って家を出る。見送りしてくれるおばあちゃんに手を振り返して、太股の黒い銃を触れた。この銃も、なんだかんだ大切になってきていた。銃を相棒と言う人の気持ちが、今はよくわかる。