劣等少女の病名【2】 (ページ12)

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58.約束の話ページ12

気まずい状況になった時の対処法なんて、人と関わる機会の少なかった私には分からない。でも、仮に対処法を知っていたところで、この人には効果が無いんだろうから意味無いか。

＿＿ああ、気まずいって……

あれから黙り込んで何か考えてる雲雀さん。お互い向かう場所は同じなので、必然的に一緒に歩くことになってしまう。普段なら私が少し距離をあけて後ろからついて行くところ、今日は流れで隣を歩いていた。今更歩くスピードを落とすのも変な気がして、オレンジに染まった夕空を仰いでみる。

夕日と雲雀さん。そういえば、前にもこんな事があったっけ。放課後、校内の見回りをした時だ。思えばあの日、こうして近くにいることを許されて、認めてもらえたようで嬉しかった。夕日をバックに立つ雲雀さんを今でも鮮明に覚えてる。

すごく、綺麗だったから。

横をチラッと見た。前を見ているその目は、やっぱり何か考えてるように見える。

｢雲雀さん。少し失礼なこと言ってもいいですか｣

返事はない。無いけど、この人は嫌なことはハッキリ口にする人だ。何も言わないってことは、言ってもいいってことだと思う。……たぶん、そう。

｢私、雲雀さんって怖い人だと思ってました。ていうか、今でもやっぱり怖いって思います。目つきとか強過ぎるところとか。でも、雲雀さんって綺麗なんですよね｣

この人は綺麗だ。見た目もそうだけど、その真っ直ぐな強さがどこまでも美しい。雲雀さんの前世はブラックダイヤモンドとか、そういう固くて綺麗で、その良さを知れば魅入られてしまうようなものだと思う。

｢私も、貴方みたいになりたいです｣

これは憧れだ。今まで理想しか抱いてこなかった私の、初めての憧れ。この人の傍で、隣で、もっとあの"綺麗"を見ていたい。

｢雲雀さん、私のような人間を受け入れて下さり、本当にありがとうございます。私、もっとお役に立てるよう頑張ります｣

｢委員にしたのは仕方なくだって忘れてるの？｣

｢仕方なくでも、今私がここにいることが全てです｣

風紀委員に入ったことは私にとってすごく大きな変化だった。リボーンさんの話しだと雲雀さんもボンゴレファミリーの一員(許可はとってない)らしいし……だから、

｢約束します。私は必ずファミリー、いえ、雲雀さんに必要としてもらえるような人間になります｣

獄寺さんじゃないけど、貴方の右腕……は草壁さんだから、左腕になれるくらい強く。克服すること全ては、貴方に一歩でも近づくために。