07.風紀委員の話 ページ9
山積みのプリント。それが一個も完成していないのは、誰が見ても明白だった。風紀委員の人に睨まれてしまっては居た堪れない。｢持ち帰って、やる、つもりで……｣何とかそう絞り出す。足元を見ているからその表情は見えないけど、視線が痛いったらない。
｢……と、にかく、もう平気なので｣
｢君、学級委員じゃないよね｣
この人はさっきから会話をする気がないらしい。自分の聞きたいことばかり聞いて、私のことなんてお構い無しだ。風紀委員と関わることがなかったから知らなかったけど、随分な態度だと思う。
｢学級委員では、ない……です｣
それとも、私相手だからだろうか。
私なんて見るからに暗そうだし、影も薄いし。
風紀委員の人はより一層目を細めて、それからプリントの山をちらっと見た。肩にかかった黒い学ランが、横を通る。えっという声が小さく零れた。その人は、プリントの前に立っている。
｢これ、どう見ても彼らの仕事だよね｣
｢ぁ、でも、忙しい……｣｢忙しい？｣
その人は呆れているような、怒っているような声でそう言うと、溜め息を吐く。まだドアの前で突っ立ってる私見て眉をひそめた。
｢今日は学級委員に仕事なんて、ないはずだけど｣
え。
声は出ない。少し空いた口からは、何も音を発せなかった。でも、とか、先生が、とか。言いたいことは山ほどあったのに何一つ出てこなくて。私は言いように使われたのかと思うと、あまりにも惨めだった。
｢ねぇ｣
身体が揺れる。きっと、あの人は私を哀れな女子生徒だと思っている。クラスでも一人で、孤立して、だから適当な仕事を押し付けられた。そんな私を、同情の目で見てくる。
＿＿私は、一人でも大丈夫なんだ
＿＿だからいいんだ
＿＿私は惨めなんかじゃない
恥ずかしくて赤くなった顔は、きっとマスクで見られていない。それでも、もう今すぐこの場から消えたかった。頭の中がぐちゃぐちゃだ。
｢さっきから、僕を無視するなんていい度胸だね｣
首に押し付けられた鉄製のなにか。いつの間にか、風紀委員の人は目の前にいた。トンファー。ああ、じゃあこの人が例の雲雀恭弥だったのか。容姿まで知らなかったから。じゃあ私、フルボッコかなぁ。
｢……なに、その目｣
｢目？｣
｢"やれよ"って言われてるみたいで、ムカつくな｣
そんな目をしていたのか。いや、正直もうどうされたって良いとは思っていた。誰も彼も私をゴミみたいに扱って、だったらサンドバッグに昇格した方がマシだ。
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まどろみ(プロフ) - 凛さん» ご指摘ありがとうございます！すぐ修正しておきます！ (2019年3月11日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - こんばんは！雲雀さんの口癖は噛みじゃなく咬みですよー (2019年3月11日 22時) (レス) id: 6bfe22f21c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月10日 22時
