40.復讐の話 ページ42
どれも怪しい話しばかりだ。事実と事実を結びつけて、それらしい理由をこじつけて、適当に話しを作ってるだけかもしれない。でも、私の前に立つ男の不敵な笑みが、土台のない真実を私の中に刷り込んでいく。
｢……仮に、それが真実、だったとして……だから何だと言うんですか…｣
｢あなたは、母親に復讐したいとは思いませんか？｣
｢復讐……？｣
｢あなたに危険な薬を投与し、蔑み、あまつさえ存在すら否定した。その女は、今もどこかで生きているのですよ？貴方の父親に寄生したように、他の金持ちの男に媚び売って｣
復讐。あの人は、良い母親とは到底言えない人だった。失敗するたび私を罵倒し、手を上げた。大嫌いだ、あんな人。
｢僕と一緒にマヤを殺しましょう。いや、マヤだけじゃない。マヤと手を組んでいたマフィア共も殲滅してやるのです｣
骸は、私に手を差し伸べる。この手をとれば、私はあの人に目に物見せてやれるんだ。私を馬鹿にしたことを、後悔させてやることができる。
｢……私は、母さんなんて大嫌いです｣
｢そうでしょう？なら｣
｢でも、もうそんなことどうだっていい｣
立ち上がっても骸は私より背が高い。見上げる形になってしまうけど、それでも私はこの人に正面からハッキリ言ってやらなけらばならない。
｢一人だった私ならこの誘いに乗っていたでしょう。でも私は今、充実しています。そんなことしなくても、もう満たされているんです｣
｢憎しみが、風化したのですか｣
｢違います。骸……さん。人体実験をされた、だから憎んで、復讐する。でもその先に何があるんですか？仮にあなたの敵を全て殺したとして、復讐に囚われているあなたは、きっと先へ進めない｣
｢知ったような口を｣
｢されたことを忘れるのは、その時の自分を殺すことです。だから忘れるんじゃなくて、抱えればいい。憎しみを忘れようとするんじゃなくて、抱えて生きることが、きっと｣
前に進むってことだから。
昔、見知らぬ子供に言われた台詞。大人達が気を使って言う台詞はどれも的外れで、そんな中、少し大人びたその子は｢嫌いなら嫌いでいればいい｣と語った。
｢……あなたなら、理解して下さると思ったんですが。どうやら見込み違いだったようですね｣
骸さんの髪に隠れていた目。
その赤い目に私が息を飲んだのを最後に、
落ちるように意識が飛んだ。
最後目に映ったのは、
まるで傷ついたような顔をした骸さん。
｢ごめ……さ、ぃ…｣
でも、気付いて。
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まどろみ(プロフ) - 凛さん» ご指摘ありがとうございます！すぐ修正しておきます！ (2019年3月11日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - こんばんは！雲雀さんの口癖は噛みじゃなく咬みですよー (2019年3月11日 22時) (レス) id: 6bfe22f21c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月10日 22時
