王道その33 ページ34
1時間のシフトを終えると、私は控え室で制服の上から着けていた桃色のエプロンを脱いだ。
トントン先輩との待ち合わせの時間は刻々と近づいてきていて、早くしないとという焦りが募る。
財布とスマホをポケットの中に入れたことを確認した私は、直ぐに教室を出ようとした。
「……あれ？A…お前早ないか？」
『まぁね。シフト終わったし』
「それは知っとるけどさ。それにしては随分と……あぁ、あれか、待ち合わせ」
『そんな感じ』
しかしそれを呼び止める声がひとつ。
控え室の扉に背をあずけたコネシマくんが、なんとも言えない顔をして私を見つめていた。
…なんで彼がそんな顔をするのかなんて全然わからなくて、私も少し戸惑ってしまう。
『…もう行くね』
少しだけこの空間にいるのが気まずかった。
理由なんて分からない。だけど、何となく早くここを離れなければ、と言う思いが強かった。
私は足早に彼の隣を通り過ぎようと足を進める。
「っ、……待てや」
…まぁ、通り過ぎることなんて出来なかったのだけれども。
強く腕を掴まれて少しつんのめる。
困惑しながら顔を見上げると、彼は一瞬だけ切なそうな瞳を私に向けた。
―――どきり、と胸が高鳴る。
「…………お前、ソーダ好き？」
『え？』
瞬き1つ。
彼はいつもの彼に戻っていた。
ガシガシと頭を掻きながら見下ろすようにして空色の瞳を私に向ける。
そして放ったよく分からない質問は、私の思考を止めるに充分なものだった。
戸惑いながら小さく頷く。
すると彼は、口にくわえていたキャンディーをするりと抜き取ると、問答無用で私の口の中に突っ込んできた。
『―――っ！―――！？』
「それ、なんか思ってたのとちゃうし、お前にやるわ」
そんだけ。じゃ、行ってらっしゃい。
何が起こったのかわからず言葉を失う私を放って、彼は教室から出ていってしまう。
幸いにもここには私と彼以外誰もいなかったからいいものの、誰かに見られていたら勘違いされそうな言動だった。
今の私には、そんなこと考える余裕なんてなかったんだけれど。
……嘘、嘘だ。
だってこれ、さっきまでコネシマくんが―――。
顔に熱が集まっていく。
誰も見ていないとわかっているけれど、この赤い顔を何とかして隠したくって、私は両手で押えながら蹲った。
―――心臓の音が、酷くうるさい。
『…関節キス、じゃん…………』
誰もいない控え室に、私の声だけが小さく響いた。
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あまね(プロフ) - ヤバい！完結おめでとうございます (8月26日 21時) (
レス) @page47 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
由依 - とても面白いです！！これからも頑張ってください！！ (2022年6月23日 2時) (レス) id: 4f57f42090 (このIDを非表示/違反報告)
由依 - 私悪役、、、、、、、、、、、、、、 (2022年6月23日 2時) (レス) id: 4f57f42090 (このIDを非表示/違反報告)
由依 - 由依って私と同じでびっくりしました！！名前はカタカナのユイに変えていたのできずきました。 (2022年6月23日 2時) (レス) @page18 id: 4f57f42090 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 麓珀のロクさん» ありがとうございます！だんだん学校生活が楽しくなっていく女の子って王道じゃん！って思いながら書いてました！楽しんでいただけたなら嬉しいです！ありがとうございました！ (2020年9月16日 20時) (レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
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