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病院の手術室前は、泣き声と鼻をすする音しか聞こえないくらい静まり帰っていた。
悠木「………舞ちゃん、大丈夫？」
舞「……。」
江口「安元さん、何か飲み物要りますか？」
安元「………今はいいわ。」
江口「……そうですか。」
中村「……悠木と田中さんは？」
舞＆悠木「…今は大丈夫です。」
中村「……俺…水。自販機あっちな。」
江口「…………分かりました。」
そう言って俺は自分用と中村の飲み物を買いに行った。
江口はこの静かな環境に耐えれなかった。
本当に俺駄目だな。
情けない思いと悲しさでいっぱいになった。
みんなちゃんと闘ってるのにな…。
飲み物を買った後、自販機に背を向けてズルズルと座り込んだ。
神家さんとはあんまりお話しした事はなかった……と言うか2人で話した事…あんまりなかったな……。
でも、俺の中では頼りになる後輩な訳で。
絶対助かると信じてる一方、不安が募る。
しかも、涙でてきた。
安元「江口、大丈夫か？」
江口「安元さん……。」
安元「さっき手術終わって。」
江口「そうですか…。」
安元さんが心配そうな顔でそう伝えてくださった。
安元「…………江口。」
江口「……安元さん？」
安元「神家さん……目覚めないかもって。助かったのか奇跡だって。」
江口「………え？」
安元「このまま植物状態になって死ぬか、助かっても後遺症が残ったり、記憶がなくなることもあるって。」
何も言えなかった。
安元「しばらく経ったら面会出来るってレベルじゃなくて、もう家族がガラス越しに出来るレベル。今日だけ会わせてもらえるって。ガラス越しだけどな。」
江口「……そんな。」
安元「飲みもん買ったか？」
江口「はい。」
安元「………行くか。」
江口「………はい。」
覚悟…しなければ。
前を歩く安元さんの後を着いて行く。
だんだんと声……泣き声が近づいているのが分かる。
その時、安元さんが止まった。
江口「安元さん…？」
安元「江口。」
安元さんは振り返って俺の顔を見て言った。
安元「…やっぱ怖ぇわ。」
安元さんの目からは涙がこぼれていた。
江口「……俺は、行ってきます。ちゃんと、今の神家さんを見て、受け止めて、信じます。」
安元「……お前、強いな。すげぇわ。かっこ悪いな、俺。」
江口「安元さん、俺も怖いです。でも、向き合わないと神家さん、戻ってこない気がして。」
安元「……お前の言う通りだわ。」
俺は、安元さんと神家さんに会いに行った。
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作者名：糸丸子 | 作成日時：2021年8月19日 9時
