Preghiera di duo～月に祈りを星に願いを～ (ページ24)

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｢弥王君、あのね。あたしは笹川さんに虐められているの。
あたしの物を盗ったり壊したりは当たり前で、怪我させられたり暴言とかも言ってくるの。
さっきも笹川さんにカッターで切り付けられて･･････｣

あざとく木吉は右手首を押さえて、泣きそうな声で震えている。
それを弥王は冷ややかに黙って見ているだけだった。
すると、木吉の言葉に再燃した様に女子が騒ぎ出した。

｢そうよ、悪いのは笹川なのよ！｣

そこから更に京子の罵倒へと変わった。
｢お前が居なくなればいい｣だとか、｢死んじまえ｣だとか、虐めにはよく言われる言葉を投げかける。
京子は弥王に抱えられたまま、俯いた。

触れている手から、京子が寒さからではなく、泣きそうになっていることから震えている事が感じ取れる。
京子に投げられる稚拙な暴言と、弥王に掛けられる証拠のない木吉擁護論に呆れた様な溜息が弥王の口から漏れ、その後に弥王はクラスメイトを見据えた。

｢んじゃあ訊くけど、笹川さんが虐めをしている証拠と動機は？
言っとくけど、｢私よりも可愛いから邪魔｣なんて醜い嫉妬から来る様な下らない理由で他人を傷付ける程、京子は腐ってねぇから。
彼女はそんな下らないことをするような人間じゃねぇし･･････そもそも、お前らは実際に京子が木吉を虐めている現場を見ているワケ？｣

眉を顰めて不快気に静かに言う弥王の言葉に、京子は違和感を感じた。
まるで、その言い分は弥王が自分のことを知っているような言い方ではないか。
言った後で弥王もそれに気付くと、自分でも解らない、と言う様に一瞬、目を丸くした。
だが、それはほんの一瞬であって、京子は気付かなかった。
弥王はそれを気にすることをやめ、更に言いつのった。

｢論より証拠。
さぁ、証拠を見せて貰おうか？｣

弥王が不敵に笑みながら言うと、クラスメイト達は近くに居る人間と顔を見合わせて、たじろいだように相談し合う。

証拠もなく他人を悪だというのは簡単なことだ。
自分の妄想で、彼奴は悪い人間、と決め付けてしまえば、その人間は自分にとっての悪となる。
そして、それを広げてしまえば、その人間は誰から見ても悪となり得るのだから。

そもそもこいつらは、京子の話を1ミリも聞いてないのだから、尚の事だ。
証拠を出せ、と言われて出せる人間は居ない。証拠がないのだから。典型的な虐めだ。