375話 ページ10
「あっ……?」
と、エレベーターが揺れる。思わずAが声を漏らした次にはガタン、と音がして停止し、扉が開く。「おっ」と弾んだような声を出したザックが背筋を伸ばした。
「おら、もうちょっとで地上だ! 行くぞ!」
「あ、待って」
先ほどまでの不機嫌はどこへ行ったのか。意気揚々とエレベーターを降りていくザックをAが慌てて追いかける。
先に二人が降りて、エレベーター内には視線を足元に落としたままのレイだけが残された。ただ一人、歩き出さないレイだけが。
*
「……言えない」
「やっぱり、言えない……」
「だって、ザックは、嘘つきが嫌いで……神様は、穢らわしい者がお嫌いだから。──Aも、そう」
「私の手が汚れていて、ずっとそれを隠していたことが分かったら……」
「きっと、私のことを、嫌いになる」
「二人には、本当のこと……もう言えない」
誰にも聞こえない独り言。
誰に向けるでもない独白。
レイは震える足でそっと踏み出し、エレベーターを出ていった。
*
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リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます!そしてお返事が遅れて申し訳ありません……!ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします! (2021年9月25日 2時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます!!楽しみに待っていました!夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください!! (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2021年9月1日 16時