410話 ページ45
「おい。……お前は、読めんのかよ、これ」
「……読めるよ」
「そーかよ」
短い言葉を交わして、ザックはオルゴールをぱたんと閉めた。再び小部屋に満ちていく静寂の中で、ザックは立ち上がる。
「……行くぞ」
＊
「おい、このプレートもさっきと同じでいいのか？」
部屋を出るなり、ザックはグレイにプレートを見せる。プレートの文字列を見たグレイは納得したかのようにうなずいた。
「あぁ、今度はそれが入っていたのだな。使い方は先ほどと同じだ」
「そうか」
「……書かれている文字が気になるか？知りたいというなら、私が読んでやろう。……Aなら、それが読めるはずだがな」
グレイがAを見やる。この文字を見て、Aが言葉を失った理由も神父にはわかっているはずなのだ。また見透かされたような居心地の悪さを感じて、Aは目を伏せる。その隣で、ザックはしばし考え込んだ後、こたえた。
「……いい。読むな。Aにも、きいてねぇ」
「だが、気になるのではないか？」
「……だとしても、これは誰かに教えてもらう気分じゃねぇ」
そういうと、ザックはさっさと歩き始めた。まだ何かを考えているようなザックの背中を思わず見送りそうになる。おいていかれそうになるAに、神父が声をかけた。
「……行きなさい」
「神父様……」
それ以外には、神父は何も言わなかった。ただ、その眼光は鋭くも穏やかにAを見ていた。
(……覚悟を、決めなきゃ)
──わたしにも、果たすべき誓いがあるはずだ。
意を決して、Aは小走りでザックを追いかける。
未だ開かれていない部屋。あの部屋こそ、プレートに書かれた名前の人物の部屋だ。きっとあの部屋の中で、全てを知ることになるだろう。
＊
ザックはずいぶんと先を行っていた。すでに、あの軋む廊下の奥。夫婦のプレートでは開かなかった手前の部屋の扉の前にいた。
おそらくはAが何かを迷っていることもわかっていたのだろう。それでも追いついてきたAに、ザックはただ、「これ、かけるぞ」と白いプレートを見せる。Aは静かに頷いた。
そしてザックは残された部屋の扉にプレートをかけ。鍵が開く音が、鳴った。
「開いた……」
無意識に言葉を漏らして、Aは息をのみこむ。ザックの方はただ立ち尽くしたまま、自分がかけたばかりのプレートを見つめ続けていた。
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リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます！そしてお返事が遅れて申し訳ありません……！ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします！ (2021年9月25日 2時) (
レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます！！楽しみに待っていました！夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください！！ (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リア | 作成日時：2021年9月1日 16時
