398話 ページ33
どこか安らかになっていくような犬たちの眼を見てAは言葉を失っていたが、ザックの方は自ら殺した犬の死体に目もくれない。周囲を見渡して、「……ったくよぉ」と気だるげに呟いた。
「時間とらせやがって……噛まれたところは痛ぇし……だいたい、犬ってなんだよ……このフロアの奴まじ頭どーかしてんな」
誰に言うでもないような独り言の声色でザックがそう言う。
「"このフロアはレイそのもの"とか言ってやがったけどよぉ……何なんだか……あいつのことがここでわかんのか……？」
───ほんとうに、レイのことが、ここでわかるのだろうか。
ザックの言葉で、そんなことを考えて。
できれば、知りたくないだなんて思ってしまう。
「おい、A」
ずっと立ちつくしたままだったAに、ザックが不意に声をかける。
「いくぞ」
ザックが示した、奥の扉。犬たちが守ろうとしていたその先。何かがあることは、明白だ。
「うん」
＊
奥へ進めば、獣臭さは薄れていく。通路を進んで、その先の突き当たりには小さな部屋があった。
リビングと同じような、凄まじい花のにおいで満たされた部屋は、奇妙という他ない風貌をしていた。
───ガラクタばかりの、部屋だった。
「趣味のわりぃガラクタの山だな……」
ザックが辺りを見渡してそんな声を漏らした。
転がるモノたちの中でも、特にぬいぐるみが多い。しかもそれらは赤い糸で縫われた縫い目だらけで、そんなものがいくつも積み重なっている。赤い糸で縫い合わされた、それらは。
(B6でレイが繋ぎ合わせた、あの小鳥みたいだ……)
そんなことをふと考えさせるような。そんな歪に満ちている。
特に目立つのが、人型のぬいぐるみだった。そのぬいぐるみには片腕がなく、まるで誰かによって腕をもぎとられたかのようだった。
「気味、わりぃな……」
ボソ、とつぶやくザックはどこか遠い場所を見ている。何かを思い出しているかのような目。
「ザック……どうか、した？」
「いや……よく似た光景を、見た気がするんだよ。結構最近に……くそ、わかんねぇ」
ザックは曖昧な記憶を振り払うかのようにガシガシと頭をかいて、気を取り直して周囲を見渡しながらウロウロと散策し始めた。
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リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます！そしてお返事が遅れて申し訳ありません……！ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします！ (2021年9月25日 2時) (
レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます！！楽しみに待っていました！夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください！！ (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リア | 作成日時：2021年9月1日 16時
