390話 ページ25
*
Aがザックに追いつくと、ザックは床から何かを拾い上げたところだったらしい。
怪訝そうな顔をして拾った何かを眺めるザックの後ろから背伸びをして、それを覗き込む。
それは少し汚れたプレートだった。中央に、二列の文字が書かれている。少し掠れたそれを読めずに、ザックは困っているようだった。
「……くっそ、読めねぇ。やっぱり字の勉強くらい、しとくんだったか」
「……ねぇ、ザック、これ」
ぼやくザックに対し、その文字列を見たAは言葉を失った。
ここに書いてあるのはどうやら誰かの名前のようだった。二人分の名前が書かれているが、男女の、しかも夫婦の名前のようだった。そして、そこに刻まれた、ファミリーネーム。
(……そんな)
Aの様子を見て、ザックはさらに怪訝そうな表情を深めた。
「おい、なんて書いてあんだよ」
「これは……」
言いかけて、Aは口を閉ざした。あまり確証のないことを言いたくはない。口にして、それが事実だと認めたくなかった。
「おい……」
「……ごめん」
うつむいて目を逸らしたAを見て、ザックは何かを察したらしい。舌打ちはしつつも、それ以上言及することはなかった。
「……次、行くぞ。こっちの床はやたら軋んでるから、後にする」
そう言ってザックは、登ってきた階段とは反対側の階段を降りていった。
ザックが軋むと言った廊下が、左方向に続いているのを一瞥してAもまたザックの後を追った。
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リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます!そしてお返事が遅れて申し訳ありません……!ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします! (2021年9月25日 2時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます!!楽しみに待っていました!夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください!! (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2021年9月1日 16時