検索窓
今日:5 hit、昨日:16 hit、合計:18,997 hit

370話 ページ5

各階を通って、B2までようやく戻ってくる。大聖堂に向かって歩きながら、レイがザックの顔を見上げてふと口を開く。



「ねぇ、ザックは、まだちゃんとここから出たい?」


「あぁ? 当たり前のこときいてんじゃねーよ。でなきゃこんな必死こくわけねぇだろうが!」



 顔をしかめて怒鳴り返すザックを不安げな目で見つめたレイはAにも同じ問いを投げかけた。



「……Aは?」


「……うん。出たいと思うよ。二人がいてくれるから、わたしもそう思える」



 Aの返答をきいたレイはふっと俯く。平坦な声で「そう。ならいいの」と言い、何事もなかったようにまた足を進めた。


「ホントに変なやつだな。言っとくが、俺の言葉に何一つ──嘘なんかねぇぞ!」


 ザックの言葉にレイは小さく頷いたが、その顔はどこか浮かない様子だ。自分を落ち着かせるかのように小さく胸をおさえるレイを見てAは首を傾げる。──レイの様子がおかしい。そんなことを考えているうちに三人は大聖堂にたどり着く。



「でけぇ教会だな……」



 どこか呑気な声でそう呟いたザックが教会の天井を見上げるのにつられて、Aも顔を上げた。


 天井まで連なるステンドグラスから、色とりどりの光が降り注いでいる。首をいっぱいに傾けなければ見上げられないほどの巨大な教会。こんなにも立派な教会があるのが地下だと言われても、簡単に信じることはできないだろう。ふとAは、かつて地上にいた頃にグレイと日々を過ごした教会を思い出した。心が凪ぐように澄み渡っていく。


 レイもAと同じように天井を見上げ、何かを考え込むかのように黙り込んでいた。ステンドグラスの光に魅入られたかのようなレイに、ザックが話しかける。



「……でもよ、あいつ、よくお前に薬を渡したな」



 あいつ、というのはグレイのことだろう。Aがレイの方を振り向くと、レイはその時のことを思い出したのか、小さくため息をついたようだった。

371話→←369話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
124人がお気に入り
設定タグ:殺戮の天使 , ザック
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます!そしてお返事が遅れて申し訳ありません……!ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします! (2021年9月25日 2時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます!!楽しみに待っていました!夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください!! (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リア | 作成日時:2021年9月1日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。