362話 ページ45
*
「おまたせ──……ザック?」
部屋を出たAを見るなりザックがドスドスと盛大な足音を立てながら部屋を出ていった。後には居心地の悪そうなレイだけが取り残されている。
Aは困惑しつつレイに歩み寄る。なんとなしに声を潜めてレイに状況を問うた。
「レイ。ザック、どうしたの」
「……早くここを出たいみたい」
レイの返答にああ、と納得したAが苦笑いのような吐息を漏らすと、部屋の出入口からザックが顔を出して怒鳴った。
「おいA!用が済んだならとっととここを出るぞ!」
言い捨てるとザックはすぐに引っ込んでしまった。おそらくはやけくそに先に進み始めてしまうのだろうが、このフロアが迷宮であることはAが一番知っている。
「レイ、待っててくれてありがとう。ザックが迷子になる前に追いかけよう」
「うん」
レイの手をとると、ザックの後を追うために駆け出す。そのまま、ごく自然な流れで自室を出た。
家具は少ない部屋だった。その部屋は、まるで世界から隔離されたかのような異様さの漂う空間だった。Aが暮らしてきた場所だった。
この場所もAにとっては大切な場所だったけれど、先ほどのような別れの儀式は必要なかった。ザックが、多少強引に連れ出してくれたから。きっとそれはザックにとっては意図しないことだったのだろうけれど。
──ああ。少し、笑ってしまう。
上を目指そう。前に進もう。きっとこの2人と一緒なら、踏み出せるから。
無意識にレイの手をギュッと握れば、そっと握り返してくれるその感触。ほんの少し前よりも、世界は眩しくなった。
*
202人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リア(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!二度入ってしまったことはお気になさらず!一気読みしてくださったと聞いて嬉しい気持ちでいっぱいです。かなりゆっくりの更新となってしまっておりますが、今後もぜひ読んでくださると嬉しいです! (2021年2月15日 22時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
あや - すみません、二回も同じ文が入ってしまいました(汗) (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 黒白の猫さん» コメントありがとうございます!まさか私の書いた文章でそんな風になって貰えるとは……!?(?)ここからの展開もお楽しみいただけると幸いです! (2020年10月13日 19時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リア | 作成日時:2020年7月13日 20時