361話 ページ44
「────」
覚悟を決めるように、深呼吸をひとつ。ドクン、と心臓が大きな音を立てた。早まる鼓動に目を瞑り、それから、ポシェットを方から外して開ける。未だポシェットの中には凶器が詰まっていて、その中身を全て取り出した。ケジメをつけるかのように記憶を辿り、その武器が置かれていた元の場所へきっちりと直す。全ての武器が揃った倉庫の中を見渡して、Aは僅かに目を細めた。
(この部屋は、わたしの全てだった)
数々の命を奪った。撃ち殺した。刺し殺した。それを使われた武器をしまい込んだこの部屋は、Aの罪そのものを示しているようにたたずんでいる。
「………………」
Aは黙って、部屋の中のとあるふたつの武器に歩み寄る。
一つはナイフ。いつか過ごした教会の倉庫でAが見つけたもの。
もう一つは拳銃。このフロアに来てから最も人を殺したであろうもの。
空になったポシェットの中にそれだけを入れた。未練だとかそういうものではなく、これらだけは持っていくべきだと感じた。自分がやった事を、忘れてはならないと思ったから。
罪を罪と知っている。いくらAが懺悔しようと罪は消えない。死者の怨嗟は払えない。償いきれないほどの罪が、Aにはある。そう自覚していた。
そんな罪人が地上に出ることへの迷いは、いつまでもAの足を引っ張って暗い地下の闇へAを引きずり込もうとする。しかし、それでも前に進むと、顔を上げると誓った。レイと、ザックに誓った。
だから。
「さようなら」
そう言って、Aは部屋に背を向ける。電灯のスイッチを押すと、もう二度とつくことのないであろう電灯がブツンと、命が途切れるその時のように消えた。そのまま、ゆっくりとドアを開き、振り返ることなく部屋を出た。
バタン、と。もう開かれることのないドアが、音を立てて口を閉ざした。
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リア(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!二度入ってしまったことはお気になさらず!一気読みしてくださったと聞いて嬉しい気持ちでいっぱいです。かなりゆっくりの更新となってしまっておりますが、今後もぜひ読んでくださると嬉しいです! (2021年2月15日 22時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
あや - すみません、二回も同じ文が入ってしまいました(汗) (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 黒白の猫さん» コメントありがとうございます!まさか私の書いた文章でそんな風になって貰えるとは……!?(?)ここからの展開もお楽しみいただけると幸いです! (2020年10月13日 19時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2020年7月13日 20時