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422話 ページ9




 ──そこで、見たことはとってもよく覚えてる。



 キッチンの扉の前に立つと、いつもは扉を貫通してくるほどの騒音が響いてくるのに、この時はキッチンの中からほとんど何の音もしてこなかった。ただ、唯一聞こえてきたのは何かが潰れるような、ぐしゃぐしゃにされていくような不気味な音。


 少し戸惑った後に扉を開けて、その中で見たのは。


 真っ赤な液体の中で横たわり、動かないお母さんの体に馬乗りになって、何度も何度もナイフを突き刺すお父さんの姿。



「…………」



 その景色を見た瞬間は、本当に何の声も出てこなかった。ただ黙って立ち尽くしていると、お父さんがゆっくりとこっちを振り返って、怖い顔でこちらを睨みつけてきた。



「……そこでなにしてる」



 お父さんがお母さんの中に入っていたナイフを引き抜いて立ち上がった。顔だけをこちらに向けていたのを体ごと向けてきたので、その手に握られたナイフがよく見える。その鋭い先端からは赤い液体がしたたり落ちて、お父さんの体のあちこちが同じ色に染まっていた。



「見たな、見たんだな?」



 低い声で言いながら、お父さんは一歩こちらに踏み出してくる。



「俺はな、最初からいらなかったんだよ……ここにあるもの全部、俺を不幸にするんだ……」



 お父さんの言葉は、お母さんの言葉によく似ているように思えた。あなたがいるから、お前がいるから不幸になるのだと。だから。殺される。



「だから、お前も、死んでくれよ!!」



 大声で叫んだお父さんが、真っ赤に染まったナイフの先をこちらに真っすぐ向けた。そのまま覚束ない足取りで向かってくるのを見て、すぐにキッチンを出た。



「あぁ、ひどい、ひどい……」



 キッチンを出てもなお、キッチンで見た景色が視界にちらついてくる。血走ったお父さんの目と、その奥で倒れたまま動かないお母さん。どこもかしこも血まみれで、目に痛いほどの赤色に染まっていた。


 そう、赤色に。



「そうだ、子犬が……部屋に行かなきゃ……」



 同じ色の糸を持っている子犬が部屋で待っている。このままだと自分は殺されてしまって、子犬もきっとまた捨てられてしまう。そう思うといてもたってもいられなくなって、すぐにリビングを駆け抜けた。

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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん»  コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時

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