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420話 ページ7

母親の背中を見送って、レイはいまだ暗い廊下に立ち尽くしていた。



「……誰も、誰かの言うことなんか聞かない……なんでだろう……」



 常々疑問に思っていることが、口から滑り出てくるくらいには不思議でたまらなかった。
 父親も、母親も、レイに乱暴な言葉をぶつけるばかりで、何一つだって理想のようにはいかなかった。思い描く理想の家族にはなってくれなかった。そして、それはいつものことで、今回だってそうだった。きっと子犬は、今も路地裏で震えている。


 階段の方を振り向くと、母親が何かを隠していた引き出しが目に入る。そういえば、と今しがた目にした、母親が何かをそこに隠す様子を思い出した。



(……お母さん、あそこに何を隠してたのかな……言うことを聞かせる切りふだ……?)



 レイは吸い寄せられるように引き出しの前に立った。そして引き出しを開けると、そこには鈍い黒色の拳銃が入っていた。



(……拳銃……こんなもの、ここにあったんだ……)



 レイの目は拳銃にくぎ付けになっていた。これが、言うことを聞かせるための切りふだ。
それを眺めている間は、どうしてだろう。少し気分が落ち着くようだった。だからその場は大人しく、引き出しを閉めて。母親に言いつけられたとおりに、レイは自分の部屋へと向かっていった。


*


「──けっきょく、誰も私の話なんて聞いてはくれなかった」



画面の中で、レイが小さな声でつぶやく。思い通りにいかない日々の中で募らせた絶望を、その瞳の中に湛えながら。



「それからしばらくして……あの時の子犬をまた見にいったの。そしたら、子犬はもう弱っていて、今にも死んでしまいそうだった」



子犬のことを思い出すかのような遠い目。



「私がその子犬にふれようとしたら───子犬は、私を噛んだ」



わずかにひそめられる眉。



「──そこから、家に帰るまでの間はあんまり覚えてない」



「気が付いたら、私は自分の部屋の中でその子犬を……''直して''あげていたの」



ふと顔を上げて微笑み。



「でも、それはすぐにバレた」



残念そうな表情で、顔を曇らせる。



「……あぁ、あの日のお父さんとお母さんは、とっても、さわがしかったな……」



*

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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん»  コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時

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