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101話 ページ11

廊下に、三人分の足音が連なっていく。それに被さるように響く、呻き声の数々。


 廊下は、裸電球が等間隔にぶらさがっているだけで酷く暗い。Aは心臓が締め付けられるような気分になった。



(……暗いし、この声、不気味……)



 足を進めれば進めるほど、呻き声は近くなっていく。ひどい腐敗臭。鼻を覆いながら、廊下の角を曲がった。



(……牢獄?)



 目の前に現れたのは、大きな牢獄だった。廊下の両側に、いくつもの牢屋が連なっている。


 裸電球は数が減って、暗さが増していた。そして、牢屋の中には明かりがない。しかし、じっと目を凝らしてみると、人のような物体がうずくまっているのが見えた。


 レイが一瞬、立ち止まった。この異様な光景に戸惑ったのか、恐怖を感じたのか。しかし、ザックは興味がないようで、脇見もせずに先へ進んでいってしまう。


 レイが一部屋ずつ、牢屋の中の物体を観察しながら、ザックの背中を追って行く。そしてAもそれに続こうとした時だ。



「わっ」



 突然レイが小さく悲鳴をあげ、後ずさった。



「レイ?」



 レイはAを振り返ると、そっと床を指さした。


 目を凝らす。



(……手が……)



 それは、牢屋の鉄格子の隙間から、助けを求めるかのように蠢き出た赤黒い手だった。


 ザックも戻ってくると、動き続ける手を見つめる。



「一生飼い殺し、か……」



 ザックは不機嫌そうな声で呟くと、その手を睨みつけてぐしゃりと踏みにじった。


 あっ、と思った時には、手は崩れてしまっていた。



「ハッ……踏んだだけで肉が崩れるなんざ、ひでぇありさまだな……あいつの言う"飼い殺し"を選んだからこうなっちまった。俺よりバカなやつもいるもんだな」



 ザックは嘲笑うかのような口調で言い放つ。


 レイが潰れた手を見つめると、次に鉄格子の中に目をやる。Aも鉄格子の中をのぞき込んでみるが、ほとんど何も見えない。
 

 いや、見えない方が良かっただろうか。────この手の有様だ。牢屋の中の人間が一体どうなってしまったのか、それはなんとなく想像できることだ。



「……行くぞ! しょうもないことに時間とってらんねぇ」


 ザックはどこか殺気立ったように鉄格子を蹴りつけると、歩き出した。レイとAも歩き出す。


 もう、鉄格子の中は見ないようにした。見てもいいことは無いだろうし、今は何よりこの息苦しい暗闇から早く抜け出したかった。

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鬼灯黒狐(プロフ) - 更新私の方が遅いので大丈夫ですよ(;´д`)w (2018年10月4日 21時) (レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 鬼灯黒狐さん» ありがとうございます!最近更新速度がおちてしまっていて申し訳ないです(>_<;)これからもがんばりますので見てやってくださいm(*_ _)m (2018年10月2日 7時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯黒狐(プロフ) - ザック最高...更新頑張ってください! (2018年9月30日 20時) (レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リア | 作成日時:2018年9月8日 19時

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