Message in a bottle【叡智】 (ページ29)

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7月13日、3枚目ページ29

『我々は、どうしても明確な原因を知りたがる生き物です。何故それが発生し、何が悪だったかという解を求め、そしてその悪を取り除き、これで大丈夫だと安心する。“ア”の誕生背景にあったのも、そんな心理。敵は分かりやすければ分かりやすいほど良い。「わかりやすいものを求める大衆」を批判している言語堕落理論は、結局「わかりやすいものを求める精神」によって生み出された、そうでなくとも、そんな精神をもつ若者が支えているのではないでしょうか。』

＊

「あの答えでよかったかなあ」
　補習を終え、カンジは廊下を歩く。独り言として呟いた。
彼女は見立て通りおしゃべりだった。勝手に話すことはしない。勝手にカンジの口を借りて喋ることはない。しかし、問いが浮かんだ瞬間に真っ先に話し始めるのは彼女だった。
『良いも何も、あなたの答えがあれだったのならそれ以上に何かすることはできないでしょう』
　でも、それが彼女にとって腑に落ちるものではなかったかもしれない。
『私はですね、先生の役割って――いろんな大人が、いろんな考えの人がいるんだよって、示すことだと思います』
　夕日が廊下に差した。渡り廊下の向こうには、コンテナを運ぶ同僚の姿が見えた。

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