Message in a bottle【叡智】 (ページ15)

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陸ページ15

「幸い資料があった。本当に爆発するらしいね、鯨」
「調べたんですか？」
　午後に来る予定だった隊員と代わり、午後も彼女は同じ仕事だった。もっとも、集中力は彼よりも、目前の文章へ注がれていたが。
「ああ、気になる性質で。どうやら、海中では体温を守るために一役買っていた脂肪が、死んで陸に上がると腐敗するのが原因らしい」
　原理的な部分にはあまり興味がなかった。けれど、昔聞いたことは子供だましの嘘ではなく、本当だったらしいということには惹かれた。
想像する。クジラ。家を何軒並べても隠し切れなさそうなクジラが、浜辺に横たわっている。それが爆発する。寒さをしのぐために身に付けたもののために。陸に出た途端、邪魔になって。
「クジラって、何で海に戻ったんでしょうね」
　日芽から初めて問いかけの形の声を出た。応答を求めているかどうかは分からない、独り言めいた言葉だった。
　鯨は哺乳類である。鯨は肺で呼吸をする。生物が進化の過程で海から陸に進出するのに反し、鯨の先祖は海へ戻った。
　陸では過多な脂肪は不要であったから。腐敗してしまうから。そのせいで粉々になって、何があったかすら、分からなくなってしまうから。

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