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誰も来ない様な、暗くて不気味な地下室。
其処では、二人の男達が言い争っていた。
言い争いも終盤に差し掛かった頃、ある少女の名前が浮かんだ。
「___彼奴は如何だ」
「…?彼奴って云われても、誰か判らないよ」
「Aだよ。太宰A」
『A』と云う言葉に、目を見開く太宰。
そんな太宰を見た中也は、クツクツと笑った。
「ハッ、太宰がそんな顔するなんてな」
「Aの事はもう忘れろと云った筈だ。彼の子は昔の事なんて覚えてない」
「そう…別にンな事如何でもいいんだよ」
中也は地下室を抜ける階段を上がりながら、後ろを振り向く。
「俺は、Aが無事かどうか確かめたかった、其れだけだ」
「ふーん…?中也って過保護なんだ、あはは」
「ンな訳ねェだろ!!」
先程まで煩かった地下室に、静けさが訪れる。
が、中也の声により、静けさはあっという間に消えた。
「云っとくがなァ太宰…」
「Aに怪我でもさせてみろ…タダじゃおかねェからな…?」
「ふふ、此の私がAに怪我させるとでも思ってる?」
「思ってるから云ってンだろ」
「あ、酷いぞー中也くーん」
抑揚の無い声で喋る太宰に、又も血管を浮き上がらせる中也。
そして、この後中也が『内股お嬢様口調』縛りになる事は誰も知らない___。
***
社員寮の前では、不安げに太宰の帰りを待つAの姿。
其の姿を見た太宰は、ほっと胸を撫で下ろし、
「A」
「!!お父さん!」
太宰の姿を捉えたAは即座に駆け寄り、太宰の額を小突いた。
「あいたッ!」
「もう!心配させないでよ!吃驚したんだから…」
「あはは、御免御免。心配させる心算は無かったんだ」
「ッ〜…お父さん今日の夕飯抜きね!」
ぷい、とそっぽを向きお怒りの様子のA。
太宰は「ごめんって〜」と、半ば反省の色が無い謝罪を述べた。
「次こんな事があったら、口聞かないから!」
「そんなに怒ってると、可愛い顔が台無しだよ?」
「良いもん!…早く帰ろ!」
後ろを向いたまま太宰の手を引いたA。
よろけ乍も、Aの手をしっかりと握った太宰。
ふと、太宰はAの少し乱れた髪から覗く耳を見た。
まるで林檎の様に真っ赤で。思わず笑ってしまったのは太宰だけの秘密。
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水瀬琥雪 - めっちゃ好きです…太宰さんの愛が感じられてやばいです…そんなキャラ弁嫌なのか……?私だったら嬉しいけどな…受験頑張ってください!! (2023年2月5日 8時) (レス) @page10 id: 28ac647065 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽんず。 | 作成日時:2022年4月27日 1時