【魔入間】コミュ障なので悪魔との対話より、縫いぐるみとの対話が良いんです。【固定魔オリ♂】

8_禁忌呪文 ページ9

壇上に上がってきた入間という彼は、なんというか影が薄い感じで、ひょろっとしていて、理事長の孫というより、森に居る小動物のような雰囲気の方が似合っている。
だけど、沢山いる観衆の前でも微動だにしない所は、さっきの首席くんより肝が据わっている感じがする。


彼は壇上にある机の上にあったらしい手紙を掴むと、それを読み上げ始めた。



「……あべるはぅけ」

『！？』



これ禁忌、呪文だ……

噛んだり読み間違えたりするだけで、四肢が爆散するハイリスクな口頭呪文。唱えるのはよほどの物知らず(バカ)か命知らず(戦士)と言われるほとんど博打のような呪文。
そんな風に世間では言われている。

小さな子供でも知ってるのに、彼はどういうつもりなのだろうか。めでたい入学式という日にそんな博打をするなんて。
どんな人か全く知らない、知らないけど…



上手く、いって……



お願いします。知らなくても、人が目の前で爆散するなんて見たくない。だから、成功して…っ。

祈るように両手を組んで、目を強く瞑る。





そんな僕の心配をよそに、彼は無事に禁忌呪文を読み終えた。
彼が読み進めるに連れて高まっていった空気は、彼が読み終わると同時に大きな歓声へと変わった。


僕の方からは歓声ではなく、彼が爆散しないか、という不安により止めていた息が出てきた。

怖い……。自分が言ってた訳じゃないのに、めちゃくちゃ心臓痛い…。でも、それよりもまず



成功して、良かった…



会場は興奮冷めやらない様子で、まだ歓声やら、彼への賞賛やらが飛び交っている。

こんな感じで今年度の入学式は幕を閉じた。

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