39_出来ればお断りで ページ40
僕の方へと飛んできていたはずの斧は、何故か自分とは真反対の場所に立っていた特待生くんの元へと吹き飛んでいた。何が起こったのか全く理解できないが、恐らく原因は僕にあるのだろう。当てかけた事を謝罪せねばと思ったが、頭も口も回らない。
特待生くんと共に手をわたわたとさせていれば、特待生くんの背後を陣取っていた主席くんが僕の方へずんずん距離を詰めてきた。待って怖い。
「貴様!イルマ様に向かって斧を弾くなど、どういう了見だ!!」
烈火の如く怒り、肩を震わせながら怒鳴られた。怖い。怖すぎる。ごめんなさい。
『すみっっすみませっ』
「ま、まぁまぁアズくん!僕無事だし、そんなに怒らなくても…」
「こういうのは示すのが大事なんです!!」
『ピェ』
特待生くんが必死に宥めようとしてくれているが、全く効いていない。なんなら彼の周囲に火花が散っている。本格的に燃やされてしまうかもしれない。
一歩後退りした瞬間、背後にヒトの気配を感じた。振り返る間もなく、背中に衝撃が来る。
「ばあっ!!」
『ぅえっ!?』
「クララ!?」
声と特待生くんの反応から、珍獣と称されているウァラクさんが飛びついて来たのだと気づいた。前につんのめると、背中から楽し気な声と明るい黄緑色の髪が落ちてきた。
「あっはは!すごいすごい!!斧がビュンッって!!すっごい!!ぬいちゃんがやったの!?」
『ぬ、ぬいっ…?』
「またおかしな呼称を付けおって」
主席くんが呆れ顔で言う。呼称…あだ名か。え、待って、僕のあだ名"ぬいちゃん"になったの!?それは目立つからお断りしたいんだけど…!!
『あ、えと、僕っ、その…!』
「いきなりわちゃわちゃでごめんねっ!?僕は、イルマ。こっちがアズくんで、そっちがクララ。君の名前、聞いてもいいかな…?」
恐らく斧を弾き飛ばしたであろう人物に、優しく名乗ってくれるだなんて…。心優しいヒト…。
じゃ、じゃなくて!僕も早く名乗らなきゃ!!そしてあだ名を改めてもらわなくちゃ!!
『ぼ、僕は…その、、ウ、ウヴァル…ウヴァル・サマエル、です…』
「サマエルくんかぁ!よろしくね!!」
どもりながらも名乗れば、にぱっと花が咲くように彼は笑った。優しく差し出された手を、少しビクつきながらも、握手を返す。
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モンモン - 更新楽しみにしとります! (5月21日 0時) (レス) @page39 id: 7fe6f6ee48 (このIDを非表示/違反報告)
☆?(?v?。)(プロフ) - 好きです!!主人公のキャラが立っていて凄く良いし、何より文章が上手くて面白いです!続きを楽しみに待っています!! (2023年1月31日 19時) (レス) @page38 id: 55f21e1ec6 (このIDを非表示/違反報告)
小柴紬 - 階段をくだっていく教室って…(あそこかぁぁぁぁぁぁぁ) (2022年11月7日 7時) (レス) @page35 id: 2e1df96980 (このIDを非表示/違反報告)
ほしぽん(プロフ) - ツムがおる (2022年10月17日 18時) (レス) @page31 id: 86c5fe95fa (このIDを非表示/違反報告)
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