I know. 3 ページ46
梨木さんは、司法が下した罪状を受け入れて笑っていた。『計画的な殺人未遂』『無辜の同級生に突然暴力をふるった、猟奇的な犯行』。いずれも彼女の過ちに対して、世間がラベリングした偏見だ。
「その裁きについて異論があり、こうしてお尋ねした次第です」
僕が話したいことは、これから先が本題だった。
「許しがたい侮辱を、何度も受けたこと。学校が加害者側の少女グループをかばい、貴女の声をかき消したこと。そして、裁判所は学校側の証言を受け入れ、貴女を猟奇的な傾向がある殺人未遂犯に仕立て上げたこと。僕は全て記録をしました」
少女はうつろな目で僕を見た。これまで何度も挙げてきた助けを求める声が、様々な理由によって撃ち落されてきたのだろう。かつて日本と敵対した国の異能者と同じ力を持つ少女。日本人とは異なる特徴を持つ容姿。それに伴う偏見が、14歳の少女をここまで追い詰めてきたのだ。
「『
「――。」
「私が、異能者だから……危なくて、生きてちゃ、いけないんだって」
言葉が、出てこなかった。猟奇的なのはどちらだろう。
最初にハサミで制服を切られ、髪をザクザクにされたのは、梨木さんだった。その様子を見ていた教員は「屋上から飛び降りられたら面倒だぞ」と笑っていた。これらの行動すべてが白日にさらされそうになれば隠蔽し、「学校が合わないなら転校すればよい」と発言する。
これが、異能力を持つ者への偏見が生み出す残酷な言葉だ。それに対して、同じ異能者として、異能特務課として。僕は声を絞り出さなければならない。
「――異能力は。誰かを救うこともできる力なんです」
異能は犯罪の道具ではない。戦争の道具でもない。かつて、戦争があった国の出身だからと言って、排斥をしても良い理由にならない。たくさんの言葉が脳をよぎった中で、ようやく絞り出せたのは、あの一言だけだった。
「僕たち異能特務課は。異能を持つ人間をいたずらに排斥する、今の世の中があってはならないものだと考えています。異能を人々のために使えば、危険な異能者であっても生きていける土壌がつくれるはずです」
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - てんてくさん» 安室さんのファンの方ですか?!細かいところまで読んでくださってありがとうございます〜。警察庁と警視庁の違いについて勉強になりました! 現実では法務省ですが原作では司法省だったりする世界なので、心の目で読んでください〜( ´ ▽ ` ) (2021年4月27日 18時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
てんてく - ページ18についてなのですが……警視庁ではなく警察庁では…?公安は一応警察庁警備局警備企画課なので……間違えていたらすみません<(_ _)> (2021年4月27日 9時) (レス) id: 0e2cae39fb (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - あれまー(^_^;)。これまた、ゲキヤバ(;゜0゜)。余談、足立さん以外とドジですねー笑(^^)。 (2020年2月17日 19時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» 足立さんマフィア、やめるってよが、良い小説でしたので、こちらも、読ませていただきます♪♪。読む前から、楽しみ♪♪です〜笑(^^) (2020年2月16日 13時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - かなとさん» シャークトパス…サメ+タコという驚異的な発想の元生まれたアメリカ映画です。頭のどこかが宇宙的な攻撃を受け、SUNチェック入ること請け合いですがぜひご覧ください! (ストーリーの核心に触れることに反応できなくてごめんなさい) (2016年9月17日 15時) (レス) id: ee9a5e5139 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年9月5日 23時