I know. 2 ページ45
僕は少女に視線を合わせるようにすると、彼女は怯えた目で僕を見た。
「梨木香歩さん。僕は貴女の家庭教師であり、ボディーガードになる者だと説明してきましたね」
「……はい」
「真実をお話しします。僕は貴女を監視する人間として送り込まれました。異能が暴走をした時には、貴女の命を奪う権限もあります」
ひゅ、と息をのむ音がした。青い目からは涙がこぼれ、祖母のエプロンを握りしめている。どんな反応が返ってくるのか理解をしているつもりだった。それでも、真実を伝えると決断したのは僕だ。
「梨木さん。この世の中には、『異能力』を持つ人間が、少なからず存在することが判っています。その力は必ずしも、能力の持ち主を幸福にするとは限りません。……力が原因で犯罪に巻き込まれることも、反対に犯罪に加担する原因にもなるでしょう」
「犯罪……」
「貴女の能力、『
彼女はおそるおそる頷いた。まるで罪を打ち明けるような動作に、胸の奥がきしむような音がする。梨木さんが『
「その力は、無機物と対話することで『持ち主』のことを聞き出すだけではなく、念じることで意のままに操ることもできる。つまり意図的に操ろうとしなければ、発動することがない異能です。言っている意味が分かりますね」
「――私がやったこと、知っているのね、」
「香歩」
「I know, grandma」
梨木さんは祖母のエプロンから手を放し、いびつな笑みを浮かべた。
「私……、ハサミを、飛ばしたわ。同じクラスの、女の子に……。それで、髪をぐちゃぐちゃにした。服も、ぐちゃぐちゃにした。事故なんかじゃないの。ハサミに、お願いしたのよ」
梨木さんが起こした事件――異能犯罪の事はよく知っている。
同じ中学校に通う同級生と口論になり、異能によってハサミを操作して意図的に傷つけた。感情的な暴走などではなく、意志を持った障害であったために、少年犯罪とは思えないほど重い罪状が下ると予想されている。記録したのは僕だ。判っていて当然だ。
「この子の魔女修行は私が仕込んでいる最中さ。貴方たちの手を借りずとも、異能の暴走なんてさせやしない」
「いいの、おばあちゃん。私がやったことだもの。裁かれなくちゃいけないわ。――何でも自分で決めること。そういう修行だったじゃないの」
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - てんてくさん» 安室さんのファンの方ですか?!細かいところまで読んでくださってありがとうございます〜。警察庁と警視庁の違いについて勉強になりました! 現実では法務省ですが原作では司法省だったりする世界なので、心の目で読んでください〜( ´ ▽ ` ) (2021年4月27日 18時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
てんてく - ページ18についてなのですが……警視庁ではなく警察庁では…?公安は一応警察庁警備局警備企画課なので……間違えていたらすみません<(_ _)> (2021年4月27日 9時) (レス) id: 0e2cae39fb (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - あれまー(^_^;)。これまた、ゲキヤバ(;゜0゜)。余談、足立さん以外とドジですねー笑(^^)。 (2020年2月17日 19時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» 足立さんマフィア、やめるってよが、良い小説でしたので、こちらも、読ませていただきます♪♪。読む前から、楽しみ♪♪です〜笑(^^) (2020年2月16日 13時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - かなとさん» シャークトパス…サメ+タコという驚異的な発想の元生まれたアメリカ映画です。頭のどこかが宇宙的な攻撃を受け、SUNチェック入ること請け合いですがぜひご覧ください! (ストーリーの核心に触れることに反応できなくてごめんなさい) (2016年9月17日 15時) (レス) id: ee9a5e5139 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年9月5日 23時