【文スト夢】007の失踪〜俺の失踪届けも出せ〜

黒い黒い、どんどろ　４ ページ32

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異能特務課や軍警にとって、足立先輩は「鬼神」だ。


気分次第で脳を溶かし、ただ折り紙を折るだけで無造作に殺せてしまう。一部の特務課エージェントの間では、先輩の顔写真付きで警告が出回っているらしい。当然の対応である。


ただ一つ、この能力には抜け道がある。それは、「足立先輩が憎悪を向けている相手にしか効果がない」という点だ。だから、どうやっても足立先輩が憎んだり、嫌ったりできない相手には一切ダメージが入らない。


それが、芥川先輩だった。――足立先輩にとって、絶対に嫌えず、憎めない相手が、芥川龍之介という人間だった。


なので芥川先輩が、すべて粉砕した。


左腕がもぎ取れる寸前まで切りつけ、痛みで正気に戻した後に病院へぶち込んだ。と――記録はここで終わっている。


「まるでデウス・エクス・アクタガワだろ？？ すげーよな」

※デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)とは？
演出技法のひとつ。劇の内容が複雑になりすぎて収拾がつかなくなった時に、絶対的な力を持つ「神」を出して、すべて解決させてしまう手法。古代ギリシアの劇で多用された。


「…………中也さん、黒い折り鶴がびゅんびゅん飛んでる中でも無事だったんですよね。だからそんな気軽に言えるんですよ」


絶対に嫌えなくて、絶対に憎めないなんて。そんなこと、普通に生きていれば家族にだってできないのに。


足立先輩にとっての芥川先輩や中也さんがどのような存在なのだろう。


それに、何の怒りがあれば、顔も名前も知らない人間を、「軍警」や「異能特務課」という理由だけで殺せてしまうのだろう。


足立先輩のことは、やっぱり何もわからない。

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資料を閉じると、首領と幹部の二人は飲み物を置いた。同じ情報を共有したことで、ようやく本題に移れる、といった様子だった。




「一之君の呪殺が発生する条件は二つある。まず一つ目、彼の恨みを買うことをしたとき。どんなことをすれば恨みを買うのか、正直今となっては分からないけれど、これは今の我々には当てはまらない。問題は、二つ目の条件だ。――一之君の精神が、異能力によって著しく乱されたとき。 今回当てはまるのは、このパターンだ」



現在、足立先輩は任務中に、なんらかの異能攻撃を受けて記憶喪失になっている。更に、精神病院へ入院中のところを、軍警に誘拐される事態に陥っているのだ。


いつ、どんな精神操作による攻撃を受けているのか、全く把握できない。

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