【文スト夢】007の失踪〜俺の失踪届けも出せ〜

黒い黒い、どんどろ　３ ページ31

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この時、足立先輩が使った武器の中で、最も強力なのは異能力『斯哉等草(かやらぐさ)』による呪いだったと記録されている。


斯哉等草には様々な機能がある。鉄と化合をして本物の手裏剣を作る、紙の周囲の重力を操作して折り鶴を飛ばす、カエルを折って水に溶けない紙をつくるなど……要は、「作った折り紙にあわせた効果を、紙に持たせることができる」能力だ。


科学的な応用を利かせることもできるけれど、折り紙がもつ能力の大半は、精神操作の効果がある幻術だった。だから分類をするときは、便宜上「精神操作異能」とすることにしている。


――この幻術こそ、斯哉等草を「人を傷つけられない、最弱の異能力」たらしめている所以だった。本人も「肝心な時に一切役に立たない」と話しているぐらいだけれど、その理由は簡単だ。


「足立先輩の心理状況」が、そのまま幻術の威力に反映される仕組みだからだ。害意や敵意が強ければ強いほど殺傷能力が上がる。対して、心が穏やかで安定している状態であれば、威力はゼロ。


いつでも臨戦態勢で、戦う意思のある芥川先輩が斯哉等草の異能者であれば、凶悪で最高峰の精神操作異能と呼ばれていただろう。しかし、足立先輩が、いつでも冷静でおっとりしている様では、威力が出なくて当然である。


この威力を判別する方法は簡単だ。折り紙の色を見ればいい。





実は、元々の紙の柄は、足立先輩が作った折り紙に反映されない。柄には足立先輩の心が映し出されているらしい。色彩豊か(カラフル)であれば、いつもどおりに心穏やかな証拠。幻術の威力はゼロだ。





反対にまずいのは――「黒い折り紙」ができるとき。


憎悪、自己嫌悪、悪意。負の感情がうずまいて、心を真っ黒に塗りつぶしているとき、どんな光を通さない黒い折り紙が生まれる。


この黒い折り紙によって生み出される幻術は、脳幹を直接犯し、精神汚染と同時に神経を焼き切るほどの熱を持たせ、一目見ただけで「脳を溶かしてしまう」。文字通りに。解剖結果の横には、何人もの軍警や特務課のエージェントが犠牲になったと書かれている。

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