【文スト夢】007の失踪〜俺の失踪届けも出せ〜

推理ゲーム　３ ページ21

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「ここまでわかったことは二つあります。犯人が使用したのは、少ない量で致死性を発揮する、遅効性の神経毒であること。それから、入手経路で足がつかない『自然毒』だということです。

凶器が本当に出てこなかったのだとしたら、針で刺したのは毒針で殺したと誤認させたいからでしょう。つまり、生徒さんは毒物の経口投与によって亡くなったのです。

　それじゃあ、どんな毒が生徒さんを殺してしまったのか。これを考えなくちゃいけません。」

「その判断のために、食事のタイミングが必要だということか？」

「ええ。資料には、ご飯を食べている最中に怒られたのか、それとも食べる前に怒られたのか、とにかく食事を摂ったタイミングが記載されていませんね。

　……食べている最中に怒られたのだとしたら、遅効性の毒。食べる前に怒られたのなら即効性。この二つに絞ることができます」


青年の指摘は丁寧だった。毒物に関する専門知識は一般程度だけれど、その知識だけでも論理的な思考によって答えに近づこうとしている。


「成程な。被害者の少年は、叱責された後、周囲と20分遅れて食事をはじめた。」

「20分ですね」


ここまで、青年の推理は順調に進んでいる。しかし、毒が「経口投与」だとわかったとしても、もう一つの問題にぶち当たってしまう。


犯人はどこで毒を仕込んだのか。この問題は捜査当局を混乱させる原因となった。


普通に考えられるのは食事の前だけれど、個人の食事にだけ毒物を盛るには、周囲の目がありすぎる状態だ。


加えて、被害者を含めた全生徒の食器皿には、毒物が検出されていない。調理中に毒物を加えたとしても、加熱処理によって毒性を失くしてしまう種類は多岐にわたる。


しかし、青年は平然と手を挙げて言った。


「探偵さん、もう一つ質問です。この食事の献立を教えてください」

「献立？」

「ええ。『朝食』とは書いてありますが、この日の献立については一切記述がなかったので」


――なんだって。もうそのことに気が付いたの？！


「もう答えが分かったかもしれません。……もしも加熱処理を必要としない献立で、体に入るまでは毒物として検出されない毒があれば、の話ですけど」


綾辻先生は、青年の顔をまじまじと眺めた後、無造作にもてあそんでいたキセルを置き、静かに答えた。

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