【文スト夢】007の失踪〜俺の失踪届けも出せ〜

それは鏡合わせのような　１ ページ3

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新人捜査員のアパート/早朝/晴れ


「以上が、彼女に関する情報のすべてです」


なぜ、監視対象だった異能者が特務課に入庁しているのか。
そして、なぜ坂口先輩の記録に、虫穴状に抜けている部分があるのか。


「先輩……やっぱり、思い出せないんですか。彼女が監視をしていた異能者だって」

「……ええ。僕の記憶どころか、公式の記録にまで穴があるとは。僕らは何らかの異能攻撃を受けている可能性があります。本部に連絡をする間、捜査をお願いいたします」

「了解しました」


先輩は端末をスーツから取り出し、特務課の本部へつながる番号をタップした。坂口先輩にしてはやや上ずった声で、新人エージェントの死体が郊外のアパートの一室で発見されたこと、彼女が通報を受けていた「行方不明の捜査員」であったこと等を伝えている。


私は部屋を見渡し、これまでにあったことを振り返った。


―――【政府組織のエージェントが行方不明になった。】通報を受け取った私は、直属の上司である坂口先輩とともに、当人のアパートへ向かう。長期戦を覚悟していた自分とはうらはらに、彼女はあっさりと自宅で発見された。……首を切り落とされ、椅子に腰を掛けた状態で。


エージェントが行方不明になった場合、出動するのは機動捜査隊や、軍警の捜査官でもない。同じく政府組織「異能特務課」のエージェントが捜索を開始することになっている。


異能力という公にしづらい現象を特権的に扱い、自身らも特権的に異能を駆使することを許される人間絡みの事件を、国内の組織といえど、おおっぴらに事件として扱うことは許されないからだ。


それだけに、私一人の責任は重い。早急に事件解決に向けて調査をしなければならないのに。


……今日の私は、いつも以上に、うまく頭が回らなかった。なにしろ。


「(ああもう！ やっと帰れると思ったのに、帰る直前に電話が来るなんて！)」


――徹夜明けでようやく帰れる寸前に。この新人が難事件らしきものを持ち運んできたからだ。


ここで一つ言い訳したいことがある。私は死体を見て何も感じない冷血女だ、というわけではない。


一般人のように死体に動揺しなくなったのは、私の監視対象・殺人探偵こと「綾辻行人」の影響が大きいのである。政府の顧問探偵である綾辻先生は、「解決をした瞬間、依頼された殺人事件の犯人を事故死させる」異能力を持つ。


つまり、私は毎回、誰かが死ぬのを日常的に眺めているのである。

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