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A to A《壱》 ページ6

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横浜の五〇〇m直下に、蜘蛛の巣のようにはりめぐらされた地下水路。ここは黒社会の縄張りだ。


照らしてくれる月明かりさえなく、水は墨のように黒い。


まるで、神に諭されているようだった。いかなるものも、この世界では黒が正しいのだと。


「逃がさぬ」


芥川は吠える。それから間をおかず布を硬化させ、黒い刃を前方へ振り切った。


生き物のように(うごめ)外套(コート)から繰り出された一撃は、敗残兵(ミミック)の頚椎を壊す。


灰色の襤褸(ボロ)に深い赤が飛び散った。


熟れ切ったリンゴのような臭いが充満する。


足元を流れる汚水が、芥川の靴裏を少しずつ濡らしていく。


やがて、ぼちゃり、と音がした。


身体と切り離された生首が、水路に不時着した音だ。


それを合図に芥川は歩き出した。向かった先は肉塊となった敗残兵の死体である。


天井の割れ目から垂れた水滴が、歩く芥川の頬をなぞる。


不快そうに外套の袖で拭い、生首を覗き込んだ。


「貴様か。——足立一之を襲撃したのは」


芥川は濡れた靴裏で生首を踏み潰す。もう一度、「貴様がやったか」と訊ねる。しかし返事はない。


すぐに興味をなくし、「死人に口無しか」と芥川は呟いた。それから黒目だけを闇の奥へやり、残る獲物を数える。


やがて敵の気配に口角を上げ、芥川少年は獣のように地下を駆けた。







今の芥川の狩には、誰も指示者がいない。


規則も罰則も、褒章もない。ゴールはただひとつだけだ。


ミミックの敗残兵、全てを駆逐すること。


ただの暴力だと笑われても、芥川は構わなかった。


『仲間が傷つけられれば、他の全員で仇を討つこと。』


それが芥川の秩序で、少年のころより守り続けた唯一の掟だった。


ミミックの一人が、短機関銃を乱射する。それらの弾が届く寸前、芥川の外套は生き物の様に(うごめ)く。


この音が、芥川を更に残酷なほうへと切り替えた。


「―――やつの腹に穴を開けたのは、貴様か」


異能の発動を示す赤黒い光が、外套を覆っていく。


血の気が失せた色の白い肌と、外套の黒、そうして赤のコントラストが、殺風景な地下水路を彩る。


「その銃か。足立一之を、打ち落としたのは?」

A to A《弐》→←終わりの始まり



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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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