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優しい世界《四》 ページ31

「俺、が、殺し、ます」


大粒の涙を零しながら、構成員は震えた手で銃を握る。


「俺が、…俺が、」


酷く変わり果てた友人に、真っ直ぐに銃口を向けた。


男にとっては、薄汚い裏切り者ではない。どれほどの時間を共にしたのかは知るべくもないが―――友人だ。


ここにいる誰もが、裏切者とこの青年が、肩を並べて笑うところを見知っている。


少なくともこの男にとって、裏切者は、苦しんで死ぬ必要などない人間だった。


「……一発で、済ませてやる。」


膝が震え、声もガタガタになっているにも関わらず、銃口の行く先は定まっている。


強い殺意だ。今まで感じた中で、最も虚しい、空虚な殺意だ。


恐ろしく空っぽで、それ以外何も感じられないぐらいに純粋な――――。


「ッ――――あぁあああ!!!」


響いた銃声は 宣言の通り一発。


これは、殺人ではなく介錯なのだろう。友人の介錯をしただけ。地上の法では、こんなものを殺人と呼ぶのだろうか。


裏切り者の末路には、同情の余地などなかった。どのような死に方をしても、僕等が心を動かすことなどありえない。


ありえないが。



「お前は濡れ衣を着せられたに違いない、そうだろう、なぁ、恭次郎、恭次郎――――」


そいつは唯の裏切り者だと、声高に言える者は、一人も居なかった。







全員生還に貢献した千代助は、科学班の証である白衣姿のまま、病院の窓から澄んだ夕焼けの空を見上げていた。


廊下では慌しく、医者や看護師が機材を手に駆け回っている。


彼らが吸い込まれていく部屋には、9と書かれた札が下がっている。患者がマフィアの構成員である証拠だ。


千代助はすぐに僕を片目で僕を見つけ、「芥川」と呟き、唇に笑みを乗せた。名前を呼ぶか、声を掛けるだけで、僕等の挨拶は成り立つ。


隣に立つと、千代助は無言で僕に体重をかけた。振り払おうとしたが目の下の隈が酷い。数時間前の悪夢が脳裏に浮かび、なんとなく、ためらわれる。


「数字。」


しばらくすると、千代助が笑いを含んだ声で言った。


「数が違うだろ、とか。大体そんなことじゃね? 用事。逆にそれ以外にミスとかあった?」

「いや。ない。…五人とは、さすがに酷い間違いだと想うが」

「あはははは」

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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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