蜘蛛の糸、四本目 ページ4
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他人の家を壊したって平気な顔をしている彼に、無駄なこととは知りながら、私はもう一度抗議の声をあげました。
「ああ。また巣が壊れてしまいました。作り直しじゃないですか」
「丁度良い。寝ぐらを変えるところだったからな」
龍之介は乱暴です。
野犬への報復はもちろんのこと、
こうして自分たちが寝ぐらを変えるたびに、私の家まで壊してしまう。
龍之介の纏う布はいくつも姿を変えていきますから、どんなに高い場所に巣を作っても、息を吐くように簡単に寝ぐらを壊してしまいます。
そうして叩き起こすなり、空き瓶の中に私を入れて行くのです。
お陰で私はいつもいつも、龍之介と一緒にいる羽目になりました。
すこし蜘蛛の言葉がわかるからって、随分偉そうです。
彼がどうして私を小瓶に入れてまで、持ち運ぼうとするのかは気が知れません。
喋る蜘蛛が珍しい、というならば、蜘蛛と喋る人間の方がよっぽど珍しく思うのですが。
珍しいだとか、そんな当たり前の理由ではなさそうです。
話し相手なら可愛い妹も、共に暮らすお仲間でも、いくらだっていらっしゃるのに。
「放しなさい、こら、もう少し丁寧に。瓶を揺らさないでください」
龍之介は、私の言葉がわかります。
しかし気持ちは少しもわかっていないようです。
蜘蛛は蜘蛛なりに、孤独に生きていきたいものなのですが。
元よりそういう生き物ですし。
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伊織 - もう好き...!最後ウルっときましたよ。というか泣いちゃいましたよ。ほんと構成がお上手で...。芥川先生の作品たくさん使ってるの凄い好きです。千代の方も読んでるのですが作者様天才ですね。感動作品をどうもありがとうございます...! (2021年5月22日 18時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - コメントありがとうございます!!初めて書いた女主人公が蜘蛛(雌)ェ……とはいえ、実は人間だった頃が誰なのか、モチーフが居ますので、もしも暇だったら蜘蛛の前世当てクイズに挑戦してみてください笑笑 意外にも多くの方に読んでいただけて嬉しい…(芥川はいいぞ…) (2019年4月2日 11時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
多田野メガネ(プロフ) - どうも多田野です。千代の記以外の、それも女(雌?)主人公が新鮮でした(°▽°)突然の告白ですが、所々に芥川作品要素を垂らしていくマボ様が好きです。 (2019年3月27日 13時) (レス) id: d89d5986ef (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - ありがとうございます!!何も考えずに三時間で書いてみるチャレンジで、殊の外うまく書けたものなので完結させてみることにしました笑笑ギャグシリアス、展開などこれっぽっちも考えず、思いつきで書いております。とても短いお話ですが、最後までお付き合いください! (2019年3月25日 16時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴※惰眠愛してる(プロフ) - 新作おめでとうございます! (2019年3月25日 0時) (レス) id: cf0e41908a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2019年3月25日 0時