菩提樹下の逍遥《四》【文IスIト】

Q２「怒りの着火点」 ページ6

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今回のクーデターにしてもそうだ。
足立君のしかけた戦争には、仇討ちと呼ぶには謎めいたことが二つもある。


一つめ。マフィアを狙うことなく、特務課や軍警をつぶしにかかったのは何故か。

二つめ。なぜ家族が奪われたことではなく、子供たちを奪われた怒りが着火点になったのか。


…どうかな。少しは判ったかい？ポートマフィアという組織で生きるうえで、私が君を罰する権利を持たないということが。


とはいえ、今回のことが―――私にとってはすでに『あの日』なのだが―――足立君の生きる意志を邪魔することもあるだろう。…ちょっとしたカウンセリングだと思って聞きなさい。



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Q「怒りの着火点」

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「…勘違いすんな。俺はアンタが、憎いよ」


自身の胸を押さえながら少年は言った。
おそろしい化け物に脳を弄(いじ)くりまわされた恐怖はまだ抜けておらず、瞳孔が収縮している。


「でも、それ以上に、何も出来なかった自分が憎い」


ひとつ息をつき、医者と向き直る。


「芥川は優しい男ですね。俺のせいじゃなかったと言ってくれる。ですが、根本的な原因が自分にあることぐれぇ判っているのです。なぁ、森さん。貴方は私さえいなかったら、緒方の家を皆殺しにすることは無かったんじゃありませんか？」


鴎外は何も言わずに苦く笑った。

無言の肯定だ。

少年もまた、諦めを苦笑ににじませる。これぐらいでは取り乱したりはしない。

「わからないな。『家族を奪われた』という事実ではなく、家族を失った責任の方を辛く思っているなんて。子供たちの件では二度も戦旗をたてたのにねぇ」


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Q３「マフィアに捧げる懺悔。および特務課、軍警への憎悪」→←．

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