夜明け前《弐》 ページ22
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命のやりとりを面白がる芥川龍之介は、純粋な興味で足立に尋ねているのだが、車椅子でなければ土下座も辞さない勢いで後悔しきりだ。
こうした二人の性格の差は、配属先にも響くことになる。
敵としてふさがった者なら、親しい者であろうと喜んで刃を振りかざす戦闘の寵児・芥川龍之介は遊撃隊に。
そして、
『剣捌き、変装の腕、最小限の犠牲で屋台骨を覆す策。美事じゃった』
軍警、マフィア、特務課を相手取り、情報戦のみで紙面に残る大打撃を与えた足立一之は、(不本意ながらも)尾崎紅葉に才を認められることになった。
『強者よ。その隠密の才を、活かす場所がある』
その紅葉の一言には、あらゆる諜報員がどよめいた。
命を奪われる瀬戸際まで自分たちを追い込んだ化け物に、自分たちの長が手を差し伸べている。
粛清以外の道を指し示すことに、彼らの不安は徐々に増していった。
『断るかえ?』
面白がるように紅葉は笑う。足立は小さな悲鳴をあげたが、更に彼女は続けた。
『ならば切り落とさねばならぬ。その才をよそへやって、管理も監視もできぬのは胃が痛む』
『……才?』
管理も監視もできない状況は許されないとわかっていたが、その理由が思いもよらない方向に行くとは、少年は少しも思っていない。
まるでマフィアの何たるかをわかっていない様子に、紅葉は苦笑した。
子供に噛み砕いてわかるように、この道の歩き方を教えてやらねばならない、と覚悟を決めたようだった。
『それはお前の才能じゃ。若君。
手を出してはいけない悪行なものか。マフィアが今更ずるいずるいと騒ぐと思うたか?』
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - 飛沫さん» ご読了ありがとうございます!!!書いて良かったです!!!!いつも応援のメッセージやイラストをありがとうございました(;_;)完結までの糧になりました!これからも創作活動をやっていこうと思える応援の数々をありがとうございました!!! (2020年6月27日 10時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - 完結おめでとうございます! テストのせいで読むの遅れてしまいました。足立くんの切実な心を見れて嬉しかったですし、凄く感動しました!おつかれでした!! (2020年6月27日 7時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - よしな。さん» 最後まで読んでくださってありがとうございました!!!!闇堕ちする過程のお話なのでふざけることなくここまできてしまいましたが、シリアスでも最後までお付き合いくださったのがマジでありがたいです!書いてよかった!!!ありがとうございました!!! (2020年6月23日 23時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 好きです……!闇堕ちして暗殺業で生きていく決意をした足立くんを見たときは泣きそうになりましたが、茨の道を進んでも彼はなんとか生きてほしい。やっぱりこのシリーズ凄く好きです。 (2020年6月22日 22時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 操咲作乃さん» こんにちは!元気です!!!コメントありがとうございます!!コントもシリアスも頑張って書いていきますので、おつきあいください笑笑笑笑 (2020年5月12日 15時) (レス) id: b5b4ae2a61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2020年5月10日 17時