ペストマスク・セレナーデ《下》 ページ2
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「足立君はなにも罰せられる必要がないんだ。
なぜなら君の作戦は、緻密に計算された『特務課つぶし』のクーデターであって、復讐とは呼べないからだ。加えて、マフィアと軍警の共食いをねらった暴力的な作戦とも言えない」
「…それはマフィアの構成員が、誰一人として、この戦争で命を落とさなかった結果のことをいっているのですか」
恨み、辛み、憎しみ。俺の中で、精神をゆがめるほどに増大した負の感情を、この男が否定して良いはずがない。
いくつも言いたいことが浮かんで、消える。消えた傍からかきあつめて、不恰好な言葉をつなぎ合わせて投げ返した。
しかし、
「もうそのことは紅葉君から聞いているんだね。
だが、この結果が偶然でもないことは、君が良くわかっているだろう」
たったそれだけのことか、と言いたげに、鴎外はさらりとカルテに手を伸ばす。
「―――結果が、偶然じゃない?」
「マフィアの構成員は、彼等の働きによって難を逃れたのではない。君が逃れる隙間をつくったから、今もこうして無事に生きているんじゃあないか。私も含めて」
嘘だ。俺のしたことが復讐じゃなかったら、一体なんなんだ。
確かに胸のうちに、殺意が灯っていたはずだ。
「混乱させるようなことだったかな?」
鴎外は腕を組んだまま、確信犯の薄笑みを浮かべる。
わざわざ重症患者が多い病棟に俺をつっこみ、心停止の音にさらしたのも、ついでの嫌がらせだったのだろう。
「まだ診察が終わっていないんだが…。仕方がない。この話はおいおいする気ではいたけれど、せっかちな患者のためだ。はじめるとしよう」
「俺はアンタの患者じゃないよ。ヤブ医者」
「あぁ。ついに『俺』と言った。つくろう余裕も無くなったのかね」
鴎外は―――俺の良く知る、無慈悲なるマフィアの首領の顔に戻っていく。
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Q1「足立が誓ったのは復讐なのか?」→←ペストマスク・セレナーデ《上》
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - 飛沫さん» ご読了ありがとうございます!!!書いて良かったです!!!!いつも応援のメッセージやイラストをありがとうございました(;_;)完結までの糧になりました!これからも創作活動をやっていこうと思える応援の数々をありがとうございました!!! (2020年6月27日 10時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - 完結おめでとうございます! テストのせいで読むの遅れてしまいました。足立くんの切実な心を見れて嬉しかったですし、凄く感動しました!おつかれでした!! (2020年6月27日 7時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - よしな。さん» 最後まで読んでくださってありがとうございました!!!!闇堕ちする過程のお話なのでふざけることなくここまできてしまいましたが、シリアスでも最後までお付き合いくださったのがマジでありがたいです!書いてよかった!!!ありがとうございました!!! (2020年6月23日 23時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 好きです……!闇堕ちして暗殺業で生きていく決意をした足立くんを見たときは泣きそうになりましたが、茨の道を進んでも彼はなんとか生きてほしい。やっぱりこのシリーズ凄く好きです。 (2020年6月22日 22時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 操咲作乃さん» こんにちは!元気です!!!コメントありがとうございます!!コントもシリアスも頑張って書いていきますので、おつきあいください笑笑笑笑 (2020年5月12日 15時) (レス) id: b5b4ae2a61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2020年5月10日 17時