終焉《下》 ページ40
◆
最後の火球が海に落ち、飛行機がヨコハマに向けて飛んでいく。
「巨星、堕つ。か。宴も仕舞いじゃ」
紙面と映像とを交互に眺め、老翁は顔を歪めて笑った。
対局にて盛大な読み違いをして、大敗を期した後に残る
いっそ清々しいほどの
久しく忘れていた、読めない未来への鮮やかな感情が、手許の端末が震える音と共に蘇っていた。
老翁はひとつ含み笑いをし、端末を耳に当てる。
「これはこれは。港の烏合の衆、その聡明たる主人。森鴎外殿ではないか」
いの一番、組織と云う形を嫌う老翁らしい挨拶に、鴎外は朗らかにこたえた。
『大変ご無沙汰しておりますな。此度はなかなか、肝を冷やす戦があったもので。ようようご連絡を、と勤めておりましたが…遅れて申し訳ない』
「小さな歪みが重なり合った末に起こった惨劇。その惨劇を止めるに至ったのもまた、小さな個人の力が積み重なった総力じゃ。貴殿の手のひらで踊らされているだけに思えた駒には、それぞれの意思で、確かに状況を大きく覆す力があったとは…。先読みも、存外あてにならなん」
『烏合の衆なりの強さ、とも言いましょうか。組織の強さを改めて実感する一件でした』
そこで一度きり、
『―――単刀直入に申し上げよう。此度の件、一から政府に上告してさしあげても良いんだがね』
鴎外は、組織の長としての一面に切り替わった。
『若君ならば、病院で目を覚ました時点で自害していたはずだ。
首領暗殺の失敗に加えて、子供たちを自身のミスで失っている。正しい理性があれば、彼にとって親しいものが組織に処分される前に、自ら命を絶つことを選ぶでしょう。
あの少年は驚くほど老成している。なんらかの【理性を奪う】魔の手が及ばなければ、此度のような惨劇を起こすほどの情動をおこしますまい』
老翁は応えない。代わりに、電話の向こうで、うっそりと泥のような笑みを浮かべた。
『貴方は先代の大切なご友人。懇ろな関係でいたいものです。では、益々のご健勝をお祈り申し上げます。―――京極夏彦殿』
京極は通信を切り、式神を呼び寄せた。
鳥頭の和服の女が、ふわりと宙に浮く。
「
鳥はモールス信号を呟き、主人の指示に答えた。
『オ、レ、カ、ラ、ニ、ゲ、テ』
「筋金入りの、失敗作じゃ」
京極は忌々しそうに式をしまう。
それから幽谷の奥へと、ひっそりと消えていった。
◆
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伊織 - いえいえ！！私が気にしすぎてるだけなのでw お忙しい中目を通してくださってありがとうございました！ (2021年8月18日 14時) (
レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» また、先述のとおり、多忙につき反映が難しくなってきたため、誤字報告・指摘の窓口は一度閉めることになりました。 せっかくのコメントに、不誠実な対応をすることになっては心苦しいからです。。。 忍びないのですが、今後は「まあいっか！」で流してください（ ; ; (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - そこまで読んでくださった方がいるとは……！誤字報告ありがとうございます！多忙につき、反映に時間がかかると思いますが、物語として重要なシーンなので訂正いたします！ありがとうございました！！ (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - モールス信号なのですが...紹介ページ？みたいなところ、オじゃなくてエになってると思います。オは「・−・・・」かと...図々しくもすみません...！ (2021年5月21日 21時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - いつもありがとうございます！！これまでの芥川少年の行動を振り返ってみると「？！」の連続ですよね…笑笑 足立も芥川関係になるとグッズグズになるので五分五分かと思いつつ、やべえなと書いてる自分も思う時があります。 (2018年12月11日 19時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アバンギャルド・マボ | 作成日時：2018年7月8日 15時
