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審判の時《四》 ページ4

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「坂口安吾が足立一之の暗殺に失敗したのは、確かに誤算であったのでしょう。

しかし、かつて用済みの道具(前首領の孫)を棄てなかったのは、貴方の決断です。何か理由があるはず。

 前首領の情報を得た(やつがれ)……いや、知り過ぎた一介の構成員を、今ここで始末しないのと同様に」

「……太宰君は君のことを、随分と頑固で一直線な男の子だと肝を煮やしていたようだがね。

中々に情報集積と状況整理の力に長けているじゃないか。よく理解しているね。君が『ここに通された本来の狙い』を」


鴎外は鷹揚に笑った後、中央の執務室の背後に回り込み、手元のスイッチを押した。


灰色の壁面となっていた場所には映写幕が降り、操作に従い動画が映し出される。


そこに写っていたのは――――地獄だった。


航空機が火の玉となって墜落していく。


上空から降り注ぐ散弾銃の雨に、人々は成すすべなく逃げ惑う。


軍警、異能特務課。


屈強な集団が統率を失くして、雨に怯えて走り回る蟻のように、無秩序な波を作り上げていた。





「精神操作の異能というものは、異能使用者の強い感情に 極めて威力を左右されやすい。

暴力的な感情、殺意そのものが、攻撃性につながる危険性をはらんでいるのだよ。

今は軍事施設だけに留まっているだろうが、異能者本人が横浜へ攻め込めば、我々もただではすまない。

あの状況になったら、動けるのは『一之君が憎悪を抱いていない人間』しかいない。残念なことに 我々のほぼ全員の存命は絶望的だ」


鴎外はゆっくりとした足取りで芥川のもとへ歩んだ。


真正面に立ち、優しげに微笑む。


対して、芥川の表情は絶望に満ちていた。自分がこれから何を言われるのか、理解してしまったからだ。



「芥川君。君には足立一之の討伐を頼みたい。彼とは仲の良い友達だったろう?」

※→←審判の時《参》



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伊織 - いえいえ!!私が気にしすぎてるだけなのでw お忙しい中目を通してくださってありがとうございました! (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» また、先述のとおり、多忙につき反映が難しくなってきたため、誤字報告・指摘の窓口は一度閉めることになりました。 せっかくのコメントに、不誠実な対応をすることになっては心苦しいからです。。。 忍びないのですが、今後は「まあいっか!」で流してください( ; ; (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - そこまで読んでくださった方がいるとは……!誤字報告ありがとうございます!多忙につき、反映に時間がかかると思いますが、物語として重要なシーンなので訂正いたします!ありがとうございました!! (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - モールス信号なのですが...紹介ページ?みたいなところ、オじゃなくてエになってると思います。オは「・−・・・」かと...図々しくもすみません...! (2021年5月21日 21時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - いつもありがとうございます!!これまでの芥川少年の行動を振り返ってみると「?!」の連続ですよね…笑笑 足立も芥川関係になるとグッズグズになるので五分五分かと思いつつ、やべえなと書いてる自分も思う時があります。 (2018年12月11日 19時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2018年7月8日 15時

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