審判の時《壱》 ページ1
◆
芥川は一度立ち止まると、深く息をついた。
この先に首領がいる。
赤い絨毯と、茶色のドア、銃を構えた同僚達を越えた先に。
「……。」
芥川は無言で進む。
男たちは自然と、一匹の猛獣から身を引いた。
本来、芥川のような一端の構成員が、謁見を許されることはない。
幹部でも秘書でもない芥川に謁見が許される機会は、これまでにも二度だけ。
一度目はマフィアに籍を置く旨を、長に伝えるため。
二度目は、足立少年とともに世界一下らない任務を共に遂行するため。
これが三度目。
そして初めて、芥川はたった一人で、この道を歩む。
全てを終わらせるために。
「そろそろ来る頃だと思っていたよ」
頑丈な造りの両開き扉が開く。
その奥で待ち構えていた鴎外は、柔和な笑みで中央の玉座に腰を掛けていた。
―――背後に空いた大穴をものともせず。
芥川が室内へ身を滑り込ませると、背後で鉄製の扉が閉じた。
室内に陽の光が差し込む部分は、ミサイルによって開けられた大穴だけだ。
鴎外の背後にある全面窓は、通電加工によってただの灰色の壁面となっていた。
「君には、全てを
鴎外は静かにつぶやいた。感情を読ませない微笑を浮かべ、芥川の黒い瞳を覗き込んでいる。
「この事件全ての真相。そして、君が探す、たった一人の男の子の正体。全てを知るため、君はここへ来た。違うかな?」
芥川は無表情を保ったまま、首領を真っ直ぐに見据えていた。無言の肯定であった。
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伊織 - いえいえ!!私が気にしすぎてるだけなのでw お忙しい中目を通してくださってありがとうございました! (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» また、先述のとおり、多忙につき反映が難しくなってきたため、誤字報告・指摘の窓口は一度閉めることになりました。 せっかくのコメントに、不誠実な対応をすることになっては心苦しいからです。。。 忍びないのですが、今後は「まあいっか!」で流してください( ; ; (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - そこまで読んでくださった方がいるとは……!誤字報告ありがとうございます!多忙につき、反映に時間がかかると思いますが、物語として重要なシーンなので訂正いたします!ありがとうございました!! (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - モールス信号なのですが...紹介ページ?みたいなところ、オじゃなくてエになってると思います。オは「・−・・・」かと...図々しくもすみません...! (2021年5月21日 21時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - いつもありがとうございます!!これまでの芥川少年の行動を振り返ってみると「?!」の連続ですよね…笑笑 足立も芥川関係になるとグッズグズになるので五分五分かと思いつつ、やべえなと書いてる自分も思う時があります。 (2018年12月11日 19時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2018年7月8日 15時