菩提樹下の逍遥《弐》【文/ス/ト】

こんにちは、赤の他人様《七》 ページ22

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「国内に、まず叩かなくっちゃいけない都市があるのは大変だよなぁ。

しかも出来るだけ市民に影響が出ないように、なんて生温いミッションまでついてる。

　だから国は計算に計算を重ねて、確実に敵の本拠地を潰せるような兵器と環境を用意した。莫大な時間と資金をかけてな」


これから起こる悲劇なのか、もう取り返しのつかない悲劇の内容なのか。


僕の喉は潰れたように音を発せなくなった。


「戦術核兵器の小型ミサイルが飛べるのは500km以下。なおかつ成層圏まで飛んでから真上に落ちるように射てる場所を考えると、丁度、この軍事施設になる」

「……この軍事施設を攻撃すれば、どうなると言いたい」

「マフィア制圧のための拠点だった訳だしなぁ。そこに喧嘩を売られたら、軍警に限らずどんな組織だってブチギレるだろ。——これからマフィアと軍警で戦争だ」


俺のために、何人殺してしまったの？と奴は哀れみを込めて言った。


「だから言ったじゃねえかよ。尾崎さんの声で、『関わるのはよせ』ってな」


マフィアと軍警の戦争。その引き金を図らずも僕は指にかけていたというのか。


「ならば、ミサイルを飛ばさなければ良いだけの話だ。マフィア側から攻め入るような惨状にはならぬ」


――その淡い希望も、千代は丁寧に押しつぶした。


「映画の敵じゃねえんだから、話した後に阻止されてたまるかっつうの。

――兵器くんなら32分前に起動したぜ。お前と会ったのは逃げるついでだったんだよ。

　弾道計算が間違ってなけりゃ…丁度中也さんから連絡が入る数分前には着弾してるんじゃないかな。

　首領と会談中の中也さんが立っていた、執務室に目掛けて」

「千代助……お前、」


マフィア制圧のための、本拠地の破壊。

軍警による、マフィアの長を狙った爆撃。

Qの地下牢破壊。

マフィア細部の内部抗争。


――――戦争のスイッチが入った。

誰に言われなくとも、肌で直感した。

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