やさしい世界で君は、【携帯獣×海賊】 (ページ3)

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雲の上にてページ3

それは、ドレスローザの遥か上空に存在していた。

雲の雲の、さらに雲の上。天国のような空間に一人、男が雲の隙間から顔を覗かせていた。

背の高い男だった。黒いファーのコートを腕に通し、顔にはピエロのような化粧が施されてある。

しかし、男の表情は、今にも泣きそうなほど歪んでいた。

「ロー……」

微かに見えるドレスローザは、見るに絶えない光景だった。

人々の悲鳴、兵器の硝煙、空を過る銃弾。

様々な思惑が混ざりあい、地上はまさに地獄絵そのものだった。

そして、一番高い所にいる人間二人は、男にとっても深い所縁のある人物だった。

一人は、実の兄。

もう一人は、守り抜いた愛しい少年だった。

少年の青年まで成長した姿に、ズズッと鼻を啜った。

全て信じていない。そう言い切った少年が憐れで、思わず手を取って船から飛び出した半年を、男は忘れたことはなかった。

結局自分は死んでしまったけど、少年だけはどこかで元気に暮らしているだろうと根拠なく信じていた。

それが、この様だ。

男が死んでから15年。

決して短くない月日で、兄は海を越えて、国一つを乗っ取り、多くの人々の不幸と引き換えに巨額の富を得ていた。

しかし、少年……青年は憎悪と自己嫌悪の間で亡霊のようにさ迷っていたのだ。

それがなんて惨いことか。

少年の心中を思うと、胸が裂かれそうになる。

「もういい……もういいんだロー……」

おれに囚われないでくれ。

自分の為に生きてくれ。

決死の叫びも、雲の上からでは届かない。

だから、男は祈った。

膝を折って、頭を雲に擦り付け、手を痛いほど握りしめて、涙を流しながらひたすらに願った。

自分から
兄から
過去から
病気から
能力から
国から
世界から

何から何まで、青年を苦しめる全てがなくなって、

この憐れな命が幸せに生きていけるような、

そんな、やさしい世界で、どうか───

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───男の祈りはどこかで受け入れられ、

青年の胸の皮膚を弾丸が貫いた瞬間、願いは叶えられた。