とある世界線の話 ページ2
失敗は、なかった筈だ。
タイミングも取り引きも戦力も信頼も、全てこちらについていた筈だった。
でも、目の前のドフラミンゴはニタニタ笑いながら銃を構え、おれは片腕を失って地面を這いずっている。
敗因は単純な実力差。それに僅かな運だった。
「さァロー、不老手術をおれに施してくれるだろう?」
金色に光る銃口がおれに向けられた。
ふざけんじゃねェぞだったらコラさんを今すぐ生き返らせてみせろ
そう吐き捨てようとも、口から溢れ続ける血反吐が邪魔して声にならない。
咳き込む俺に機嫌をよくしたドフラミンゴは高笑いして空を仰いだ。
「麦わらの“奇跡”は、二年前から有名だった。ワニ野郎から始まり、エニエスロビー、インペルダウン、そして頂上戦争。ああ、それと魚人島か?フッフッフッ!見事なもんだぜ!」
だが、
「所詮は、ただのケツの青いガキだ」
下階での振動は収まる気配がしない。
友だちは殴れねェ、と麦わらが泣き叫ぶベラミーに呟いていたのを思い出した。
「返事を聞かせてくれよ」
そんなもの、決まっている。
「………ッハ、バーカ」
ドフラミンゴの足元に血を吐き捨てて、笑ってやった。
「てめェなんかに、コラさんが遺してくれたモンをやるわけねェだろ?」
言い終わらない内に、ドフラミンゴが引き金を引いた。
鉛玉が脇腹に食い込み、激痛と共に鮮血が吹き出した。
「……そうか、残念だロー。交渉炸裂だな」
今度こそ、胸元……心臓の上に狙いを付けられる。
ヒューヒューと漏れる息は、もう殺すことすら出来なかった。
コラさんが死んだあの日から、ドフラミンゴがただただ憎かった。コラさんを思うだけで悲しかった。
でも、同じぐらい、自分が情けなくてしょうがなかった。
生きてくれ、とコラさんは言って笑っていたけど、おれは15年前から何も変わらなかった。
自分の無力さに絶望する子どもに過ぎなかった。
ぼやける景色で見えるのは、ピンクのでかい何かと、真っ青な空だけ。
ドフラミンゴの指が、トリガーに掛かった。
「じゃあなロー」
なんだかもう、
「ここで死んでくれ」
疲れたな。
パンッ、と乾いた銃声が空に響いた。
銃弾が胸の皮膚に触れた瞬間、俺の視界が白く支配されて、意識が消えた。
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作者名:本の虫 | 作成日時:2018年9月15日 11時