方向音痴【ハスミ】 ページ45
ん〜‥
「まいったなぁ‥」
手元から感じるメアリの視線が痛い。
「ぴぃ‥」
「ごめんね、メアリ。またいつものだよ」
って言っても、まさか校内で迷うとは思わなかった。
この際恥は捨てて職員室で昇降口がどこか教えてもらおう‥と思ったのだが、その職員室にすら辿り着けない。もはや迷宮に放り込まれたかのような感覚すら覚え始めている。
「‥どうしよ‥‥あ」
ふと、職員室と書かれたプレートを遠くに見つけた。
よかった、助かったかもしれない。
早速扉をノックし、顔を覗かせる。
って、自分から開けちゃ不味かったかな‥？
今更だしなぁ。開けちゃったし、とりあえず何か言わなきゃ‥。
「あ、すみません。失礼します。あたし、一年‥の、ハスミって言います」
誰に言うでもなくそう口走っていると、一人の先生と目が合った。
「新入生？もう下校時間だけど、どうかした？」
その先生は、にこりと穏やかな微笑を浮かべてあたしへ近付いてきてくれた。
「あー‥えっと、その‥なんと言いますか。昇降口の場所が分かんなくなっちゃって‥」
朝通ったんだけどなあ‥ホントになんで分からなくなっちゃったんだろ‥。
思わず視線を逸らすあたしに、その先生は怪訝そうな顔は一切しなかった。
「ああ、そっか。この学園広いし、最初はそうなるかもね‥」
それから、先生に昇降口の場所をしっかり聞いておいた。
もう絶対迷ったりしないように、早めに慣れておかなくちゃ。
「ありがとうございます‥あ」
ふと声を上げたあたしに、「どうかした？」と先生が首を傾げた。
「先生って、何てお名前なんですか？」
「ん？‥バジルだよ」
一瞬不思議そうな顔をしつつ、バジル先生はそう名乗った。
「‥へぇ‥えーと‥い、いいお名前ですね？」
「あはは、なんで疑問形なんだい？ありがとう」
聞いておきながら何も言わないのもどうかと思って、つい余計なことを言ってしまった。
今日までしばらく、兄以外の人と話してなかったからだろうか。コミュニケーション能力が低下している気がする。
バジル先生に発言を指摘された気恥ずかしさから、また視線を逸らしそうになったとき、「さあ、暗くならないうちに帰りなさい」と先生が微笑を浮かべた。
「あ、はい。‥失礼します」
それが合図かのように背筋が自然と伸びる。
ペコリと一礼してから退室し、扉を閉めた。
「メアリ、あたしは別にコミュ症じゃないからね」
だからそんな目で見ないで。
ため息を一つ吐いてから、教えてもらった方角へと足を進める。
「‥帰ろ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 24人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ポケットモンスター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヒメアミ(プロフ) - 宣言通り長時間滞在、本当にすみません！入学式編完結しました！次は体育祭編の予定です！そして続編の始めで主催者から皆さんにお伝えしたいことがあります。すぐに続編作りますので、しばらくお待ちください！パスワードは変わりません！ (2020年8月6日 17時) (
レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - 更新します！…途中で色々あるかもなので、長時間居座るかもしれません…本当に申し訳ないです…m(_ _)m (2020年8月6日 13時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
元素(プロフ) - 更新しました！ (2020年8月6日 12時) (レス) id: 35622e45c8 (このIDを非表示/違反報告)
元素(プロフ) - 更新します！ (2020年8月6日 12時) (レス) id: 35622e45c8 (このIDを非表示/違反報告)
紅月@aile(プロフ) - 更新しました！次の方お願いします！ (2020年8月6日 8時) (レス) id: 62a5f394e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
